「まことに主がこの場所におられる」ウイリアム・モーア2010.7.11

創世記28章10−22(讃美歌 320)

◆ヤコブの夢

 10:ヤコブはベエル・シェバを立ってハランへ向かった。11:とある場所に来たとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすことにした。ヤコブはその場所にあった石を一つ取って枕にして、その場所に横たわった。12:すると、彼は夢を見た。先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。

 13:見よ、主が傍らに立って言われた。「わたしは、あなたの父祖アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたが今横たわっているこの土地を、あなたとあなたの子孫に与える。14:あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなり、西へ、東へ、北へ、南へと広がっていくであろう。地上の氏族はすべて、あなたとあなたの子孫によって祝福に入る。15:見よ、わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。わたしは、あなたに約束したことを果たすまで決して見捨てない。」

 16:ヤコブは眠りから覚めて言った。「まことに主がこの場所におられるのに、わたしは知らなかった。」17:そして、恐れおののいて言った。「ここは、なんと畏れ多い場所だろう。これはまさしく神の家である。そうだ、ここは天の門だ。」18:ヤコブは次の朝早く起きて、枕にしていた石を取り、それを記念碑として立て、先端に油を注いで、19:その場所をベテル(神の家)と名付けた。ちなみに、その町の名はかつてルズと呼ばれていた。20:ヤコブはまた、誓願を立てて言った。「神がわたしと共におられ、    わたしが歩むこの旅路を守り、食べ物、着る物を与え、21:無事に父の家に帰らせてくださり、主がわたしの神となられるなら、22:わたしが記念碑として立てたこの石を神の家とし、すべて、あなたがわたしに与えられるものの十分の一をささげます。」

 

【夢】

心理学者によりますと、私達人間は眠る時、誰でも、夢を見るそうです。特に、ラム睡眠(急速眼球運動サイクル)の時、私達はよく夢を見ます。そして、目覚めると、ある人々は見た夢をよく覚え、生々しくその内容を語る事が出来ます。うちの家内はそのような人です。実は、家内の夢には自分の両親や子供がよく現れます。その場合、家内は心配して夢に出て来た人に直ぐ電話してその調子を確認します。もっと酷い時は夜中の3時に自分の母親が病気かもしれないと起された事もあります。

 

【神は夢を通して】

聖書に出て来る人物は夢をとても重んじていました。何故なら、夢を見る時、人間は別の意識の世界に入り、無意識的にコミュニケーションを受けられると言うのです。そして、聖書を見ますと、ある時、神様は夢を通して御自分の目的と導きを人に掲示しました。ですから、信仰に於いて私達の先祖は夢を見ると、それをとても大事にしました。夢の意味を分かろうとし、そして、その夢が神様からのメセージだと信じたら、素直に従いました。

 

【ヨセフ物語】

旧約聖書のヨセフと言う人物は夢を見る事だけではなく、人の夢の判断もしました。創世記37章にこの御言葉が記されています。「ヨセフは夢を見て、それを兄達に語ったので、彼等はますます憎むようになった。ヨセフは言った。『聞いて下さい。私はこんな夢を見ました。畑で私達が束を結わえていると、いきなり私の束が起き上がり、まっすぐに立ったのです。すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、私の束にひれ伏しました。』兄達はヨセフに言った。『なに、お前が我々の王になるというのか。お前が我々を支配すると言うのか。』兄達は夢とその言葉のために、ヨセフをますます憎んだ」と記されています。(37章5−8)

 

【エジプト王の夢を解くヨセフ】

その夢がヨセフの兄達の怒りを招いて、彼等は外国に奴隷としてヨセフを売りましたが、エジプトで彼が大変偉くなり、遂に文字通りに兄達が彼にひれ伏しました。と言うのは、エジプトの王が夢を見て心配していたが、その賢い顧問達と魔術師さえもがなかなかその夢を解くことが出来ませんでした。そこに、外国人のヨセフが神様の助けで王の夢を正しく解きました。彼の夢解きのおかげで、エジプトは飢饉から救われ、その為、ヨセフはエジプト国王に次ぐ地位を得たのです。

 

旧約聖書の歴史に数多くの場合、夢の力と重要性が見られます。神は人に夢を通して大事な事を語っていましたので、夢が非常に重んじられていました。

 

【キリスト降誕とヨセフの夢】

恐らく聖書の中の一番知られた夢は新約聖書のイエス・キリストの御降誕の物語にあります。夢を見たのは同じ名前を持つヨセフと言う人物でした。覚えていらっしゃると思いますが、マリアはヨセフと婚約していたが、二人が一緒になる前に、マリアは聖霊によって身ごもりました。ヨセフはその故にマリアとの縁を切ろうと決心しましたが、主の天使が夢に現れて言いました。「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。その子は自分の民を罪から救うからである。」(マタイ福音書1章20−22)

 

産まれたばかりのイエス・キリストは更に夢で助けられました。ヘロデ王が赤ちゃんのイエスを殺す為に占星術の学者達から、生まれた救い主の情報を求めました。しかし、占星術の学者達は「『ヘロデのところへ帰るな』と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分達の国へ帰って行った」と記されています。(マタイ福音書2章12)

 

天の父なる神は全人類の為の救いの御計画を果たされるように、夢で大事なメセージを人に伝えたのです。

 

【ヤコブの見た夢】

今日の個所でも、神はやはり夢で重要な事を語りました。それも神の救いの御計画について大事なコミュニケーションでした。実は、この個所の受役であるヤコブと言う人物はあんまり模範的な者ではありませんでした。今日の御言葉の背景をみますと、ヤコブは逃亡者でした。つまり、ヤコブは兄エサウの殺人的怒りを逃れる為、家を夜逃げ、母親の遠い外国の実家へ避難しました。

 

【父を騙し兄の祝福を奪ったヤコブ】

と言うのは、ヤコブは兄のエサウから父親のイサクの祝福を騙し取りました。イサクは非常に高齢になって目が見えなくなった時、ヤコブが兄の声を真似して、偽って兄に代わって父親から祝福を頂きました。

 

【兄エソウの怒りを逃れて】

その結果、父親が召されると、祝福を受けたヤコブが 家長になり、親の財産を受け継ぎます。言うまでもないが、弟によって騙されたエソウは非常に怒り、ヤコブを消すと決心しました。

 

【逃亡者】

ですから、自分の命を守る為にヤコブは慌てて一人で約700キロ離れたお母さんの実家へ出掛けました。しかし、それが彼の将来を保証されるとは言えませんでした。家へ帰る事は難しくなり、そして母親の実家へ行っても、どのような歓迎を受けるかも分かりませんでした。その上、一人ですから色んな旅の難の心配もあったはずです。更に、どの時でも、どんな場でも、兄がいつ、自分を追い詰めて来て、殺す恐れを感じました。

 

【石を枕に野宿】

誰一人からも助けのない、彼独りぼっしで、非常に心細い気持ちで旅路に出ました。そして、ある日、日が暮れると、人出の少ない場所、そこで一夜を過ごす事にしました。彼は多分、ある程度の食料品しか持って来られなかったので、布団もないし枕も勿論なかったのです。ですから枕としてその場で拾った石を使って、地面に横になり、恐れと心配があっても、旅の酷い疲れで深い眠りに落ちました。

 

【ヤコブの夢】

ヤコブはただ一人でその旅路をしていたと思ったのですが、決してそうではありませんでした。その晩、唯一の全能の神は夢でヤコブに現れました。当然、騙し屋のヤコブはその神の憐れみと御臨在を頂く価値がなかったのです。しかし、神はヤコブを愛し、選び、御自分の御計画にヤコブの大きな役割の出番があったのです。

 

 

【神の御臨在】

たまに、予期しない所と時に、私達は神の御臨在を特別に感じますね。勿論、神の存在は教会のような特別な所に限られていません。車に乗っている時や、台所で調理をする時や、寂しい道の側に寝っている時さえも私達に現われる事があります。

 

【ヤコブへの約束】

神はその寂しい道端で夢を通してヤコブを訪ね、御自分の約束と御臨在と守りをはっきりと提供しました。そのヤコブの夢を共に学びたいと思います。今日の個所の11節の後半から朗読します。「先端が天まで達する階段が地に向かって伸びでおり、しかも、神の御使い達がそれを上ったり下ったりしていた。見よ、主が傍らに立って言われた。『私は、あなたの父祖アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたが今横たわっているこの土地を、あなたとあなたの子孫に与える。あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなり、西へ、東へ、北へ、南へと広がっていくであろう。地上の氏族は全て、あなたとあなたの子孫によって祝福に入る。見よ、私はあなたと共にいる。あなたが何処へ行っても、私はあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。私は、あなたに約束した事を果たすまで決して見捨てない。』」

 

【人類への神の祝福】

先ず、神は御自分の約束をヤコブに覚えさせました。そしてヤコブの祖父アブラハムと父親イサクに約束を誓いました主であり、その同じ約束をヤコブにもしました。それは土地と子孫と使命でした。その使命は、「地上の氏族は全て、あなたとあなたの子孫によって祝福に入る」と言う希望に満ちた事でした。つまり、ヤコブの子孫から救い主が生まれ、そのお方は全人類の罪を贖って、人間を神に和解して下さいます。やがて、ヤコブの子孫イエス・キリストこそがその役割を果たして、御自分の十字架の贖い死を通して信じる者に救いの道を開いて下さいました。

 

【ヤコブに与えられた生きる意味と目的】

神の約束を聞くと今まで、希望のないヤコブは生きる意味と目的が出来ました。彼はただお兄さんの怒りから逃げたと思ったのですが、実際に自分の命は遥かにもっと大きな意味と目的がありました。彼の子孫は大きな国になり、しかも、 地上の氏族は全て、あなたとあなたの子孫によって祝福に入る」と言う素晴らしい約束と使命でした。

 

【私たちに与えられた神の約束】

神は私達にも多くの約束をして下さいました。そしてその約束は聖書に記されています。神の力と助けと永遠の救い、その祝福と慰めと愛などは確かに私達に約束されています。ヤコブと同じように私達もその多くの約束を常に思い起こし、覚えていなければなりません。その確かな約束は逃亡するヤコブだけではなく、私達にとっても大きな力と希望になります。

 

【見よ、私はあなたと共にいる】

次は神が御自分の臨在をヤコブに誓いました。15節に主はこうおっしゃいました。「見よ、私はあなたと共にいる。」寂しくて心細いヤコブはその事を神様から聞くと、大変元気になりました。彼は一人でその道を歩いた訳ではありませんでした。神こそがヤコブと共にいらっしゃいました。又、ヤコブには未来が未知でしたが、共にいて下さる神はもう既に未来が御存知ですから、ヤコブは何も恐れなくてもいいのでした。

 

ヤコブと同じように神は私達と共にいて下さいます。詩編23編4にこの御言葉があります。「死の陰の谷を行くときも、私は災いを恐れない。あなたが私と共にいて下さる。」

 

【世の終わりまで共にいる主イエス】

更に主イエス・キリストはこう言われました。「私は世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」ヘブライ人への手紙13章5にこう書いてあります。「神御自身、『私は、決してあなたから離れず、けっしてあなたを置き去りにはしない』と言われました。」神様は私達にもいて下さいますので、平安と勇気と自身を持つ事が出来ます。

 

神は夢で御自分の守りをヤコブに約束しました。15節の後半に主はこう語りました。「あなたが何処へ行っても、私はあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。」神の守りはヤコブに必要でありました。一人でその長い旅をした彼に色んな恐ろしい可能性があったのです。しかし、主のお守りがあれば、兄の怒りや、強盗や、病気や、ライオンなどのようなものを恐れなくても良いのです。

 

実は、私達のこの世の旅路には数え切れない程の恐ろしい可能性があります。心配すれば切りがありません。しかし、神は私達と共にいて守りますと約束しています。ですから、どんな事があっても神を信じる私達は失望する必要がないのです。辛い事があっても主は必ず私達を支え、最後まで導いて下さいます。そして、更に、天国でイエス・キリストによって私達の為に場所が用意されています。ですから、ヤコブと同じように恐れずに神の者として生きられます。

 

神は丁度必要な時にその夢をヤコブに授けて下さいました。そして、信仰によってそれは私達にも与えられた夢になります。神様は私達にも御自分の約束と御臨在と守りを豊かに授けて下さいます。その賜物を頂いたので勇気と自信と喜びを持って神の民として主と隣人に仕えます。

 

しかし、神は続いて現在にも新しい夢とヴィションを御自分の民に賜ります。ヨエル書3章1節にこの預言が記されています。「その後、私は全ての人にわが霊を注ぐ。あなた達の息子や娘は預言し、老人は夢を見、若者は幻を見る。」

 

キング牧師の夢

一つの例として、神様はアメリカの黒人公民権運動のリーダーであるマーティン・ルーサー・キング牧師に大きな夢を与えて下さいました。キング師はこのようにその夢を語りました。
「には夢がある。つまりいつの日か、この国が立ち上がり、 『我々は全ての人々は平等に作られている事を、自明の真理と信じる』というこの国の信条を真の意味で実現させる事だ。
私には夢がある。いつの日かジョージアの赤土の丘の上で、かつての奴隷の子孫たちとかつての奴隷所有者の子孫が同じ食卓につくことが出来るという夢が。私には夢がある。私の四人の幼い子供達が、いつの日か肌の色ではなく、人格そのものによって評価される国に住めるようになるという夢が。将来いつの日か、幼い黒人の少年少女たちが、幼い白人の少年少女たちと手に手を取って兄弟姉妹となることが出来るという夢が。私には夢がある。『谷はすべて身を起こし、山と丘は身を低くせよ。険しい道は平らに、狭い道は広い谷となれ。主の栄光がこうして現れるのを、肉なる者は共に見る。』(イザヤ書40:4-5) 」。

 

キング師はその夢が与えられ、それを実現する為に神の助けで全力を尽くしました。暗殺されましたが、彼が指導した運動はアメリカの社会に大きな変形を起しました。

 

【西谷の私たちに与えられた夢】

愛する兄弟姉妹、最後に当たって、一つの質問を残したいです。それは、神様は現在、私達にはどんな夢、どのような幻を授けようとしていますか。神は間違いなく、私達の西谷伝道所の為に夢と素晴らしい将来があると信じております。ヤコブと同じように私達も将来が分かりません。それが悟られるのも遠い事ではありません。なぜなら、神様の不動な約束がもう私達に悟られているからです。守って下さる全能の愛である神は私達と共に今、ここにいらっしゃいます。その神は御自分の素晴らしい将来に私達を導いて下さるのです。(おわり) 

 

2010年07月11日 | カテゴリー: 創世記 , 旧約聖書

コメントする

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.nishitani-church.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/505