クリスマスメッセージ 「あなたがたのために」ウイリアム・モーア

  ウイリアム・モーア宣教師ルカによる福音書2章1−21

◆イエスの誕生

  1:そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。2:これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。3:人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。4:ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。5:身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。6:ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、7:初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。

◆羊飼いと天使

  8:その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。9:すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。10:天使は言った。

「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。11:今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。12:あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」

 13:すると、突然、この天使に天の大軍が加わり、神を賛美して言った。

14:「いと高きところには栄光、神にあれ、/地には平和、御心に適う人にあれ。」

 15:天使たちが離れて天に去ったとき、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った。16:そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。17:その光景を見て、羊飼いたちは、この幼子について天使が話してくれたことを人々に知らせた。18:聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。 19:しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。20:羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて天使の話したとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。21:八日たって割礼の日を迎えたとき、幼子はイエスと名付けられた。これは、胎内に宿る前に天使から示された名である。

 

【ソビエト連邦崩壊と孤児たち】

ソビエト連邦の崩壊直後の事ですが、ロシアの新しい政権は国営子供の家を支援する為に、 外国からのボランテイアを受け入れました。その当時、ロシアの経済が崩れ、みなしごと捨て子の数が急速に増加し、大変な社会的問題になっていました。ですからある二人のボランテイアは100人の子供の家へ派遣され、その子どもの世話をしました。食事を作ったり、赤ちゃんに御飯を食べさせたり、歌を教えたり、暖かく子供と話したりしました。

 

【イエス様の降誕物語】

クリスマスが近づくとそのボランテイア達はクリスマスの物語を子供達に伝えたかったのです。ロシアの無神論主義の時代の間、それは許されなかったので、子供達はイエス・キリストの御降誕のお話を聞いた事が全くありませんでした。そして、ボランテイアは子供達にマリアとヨセフのベツレヘムへの旅だとか、宿屋に空き部屋がない為、馬小屋に泊った事だとか、そこでのイエス様の誕生の事も、生まれたばかりのイエス様を飼い葉桶に寝かせた事の次第を全部語りました。そのお話は全く初めてなので、子供達だけではなく、子供の家のスタッフも驚きながら、神の御子イエス様の御降誕のストーリを聞いていたのです。

 

お話が済んでから、その二人のボランテイアは色紙とハサミとノリを配って、飼い葉桶に寝かしている赤ちゃんイエス様の工作を教えてくれました。皆は一生懸命に自分の物を作り、そのような工作は珍しいので、とても楽しい時間を過ごしました。

 

 

【飼い葉桶の赤ちゃん二人】

ボランテイア達は部屋を歩き回りながら子供の工作を手伝いましたが、あるミッシャと言う6歳の男の子が誰よりも速く飼い葉桶を作りました。しかし、不思議に飼い葉桶に二人の赤ちゃんが寝かされていました。イエス様の誕生の次第を聞き違えたと思ったボランテイアはミッシャ君に、「どうして飼い葉桶に二人の赤ちゃんがいるの」と優しく聞きました。そうするとミッシャ君は正しくストーリを語りましたが、新しい大団円(だいだんえん)を付け加えたのです。ミッシャ君はこう言いました。「マリアが赤ちゃんイエス様を飼い葉桶に寝かしてから、イエスは私を見て、『ミッシャ、泊る所があるの』と聞いてくれた。『ママとパパがいないから、泊る所がない』と答えると、イエス様は、『私と一緒に泊っても良いよ』と言ってくれた。『でも僕はプレゼントがないから出来ない』とイエス様に言った。しかし、僕はやはり、イエス様と一緒にいたいので、プレゼントを考えた。僕はイエス様に聞いた。『僕が飼い葉桶に入って、イエス様を暖めたら、プレゼントになるかしら。』そして、イエス様は、『私を暖めてくれたら、一番良いプレゼントになるよ』と言ってくれた。だから、僕が飼い葉桶に入ってイエス様の側に寝ているのよ。そして、イエス様は僕がいつまでも一緒に泊っていてもかまわないと言ってくれた。」

 

【友なるイエス様】

ミッシャ君は自分のストーリを語ってから目に涙が溢れ、泣きじゃくりました。そのミッシャはやっと永遠の友と味方であるイエス・キリストに出会う事が出来ました。 

 

ミッシャ君がこの世の唯一の救い主イエス・キリストの誕生のお話を初めて聞くと、それは自分の為の出来事だと信じ、ほっとしました。イエス・キリストは自分の為にこの世に生まれたと確信したのです。

 

皆さんは今日のクリスマス礼拝に与えられた御言葉をよく御存知だと思います。多分このルカによる福音書に於ける有名な個所は何回も何回も聞いた事があるでしょう。しかし、今朝、新たに聞いて下さい。クリスマス•ストーリを以前に聞いた事がないミッシャ君のような人の立場になって聞いて下さい。皆さん、この驚くべきお話に私達はどう答えられるのでしょうか。

 

(ルカによる福音書2章1−21を朗読)

【皇帝アウグストウスの住民登録令】

この個所を見ますと、最初に出る人物は皇帝アウグストウスでした。その当時、ローマ帝国の皇帝アウグストウスは世界一の有力者であり、ヨロッパと中東と北アフリカと小アジアも治めました。そして、皇帝アウグストウスの命令でローマ帝国の住民全員が課税の為、登録しなければなりませんでした。さらに、ユダヤ人は昔からの習わしに従って、登録する為、故郷に帰らなければなりませんでした。そのため、ナザレという町に住むヨセフと臨月のマリアは100キロ離れたヨセフの故郷ベツレヘムへ旅立ちました。間違いなく、アウグストウスの命令でなければその二人はベツレヘムへ行かず、その子イエスはナザレで生まれるはずでした。

 

【預言者ミカの預言】

しかし、実は、唯一の全能の神は皇帝アウグストウスを用いて御自分の目的を果たされました。その当時の何百年前にミカと言う預言者を通して神は全世界の救い主の誕生地を発表したのです。「エフラタのベツレヘムよ、お前はユダの氏族の中でいと小さき者。お前の中から、私の為にイスラエルを治める者が出る。彼の出生は古く、永遠の昔にさかのぼる。まことに、主は彼らを捨ておられる、産婦が子を生むときまで。そのとき、彼の兄弟の残りの者はイスラエルの子らのもとに帰って来る。彼は立って、群れを養う、主の力、神である主の御名の威厳をもって。彼らは安らかに住まう。今や、彼は大いなる者となり、その力が地の果てに及ぶからだ。」(ミカ5章1−3)という御言葉を成就するように、万物を治める神はローマ皇帝を左右して、御子イエス・キリストをベツレヘムに生まれさせられました。

 

マリアとヨセフはベツレヘムへ行って、今日の御言葉に記されたように、救い主がお生まれになりました。「彼等がベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼等の泊る場所がなかったからである。」

 

長く待ち望んだ救い主がやっと誕生されました。しかし、その生まれた環境は思いがけない所でした。この世の救い主である神の独り子イエス・キリストは宮殿ではなく、普通の家でもなく、宿屋の部屋でもありませんでした。泊る場所がなかった為、マリアは家畜の納屋で出産されて、生まれたイエス様を飼い葉桶に寝かせました。それは御自分の救いが誰にでもとどくように、全人類の救い主は非常に謙虚な環境に生まれました。

 

 

【天使は羊飼いに】

天の父なる神は御子イエス・キリストの降臨を計画してから、預言者を通してその御業を啓示されました。そして、その始めのクリスマスに御業を成し遂げた時、天使と天の大軍を通して主イエスの誕生が発表されました。神は御使いをローマにいる皇帝アウグストウスに送ることが出来ましたが、そうしませんでした。同じように、エルサレムに住むユダヤの王ヘロデにも天使を送りませんでした。イスラエルの祭司長にもその最も重要な出来事を発表しなかったのです。その代わりに、夜通し羊の群れの番をしていた羊飼い達に天使を遣わし、その素晴らしいニュースを発表されました。「恐れるな。私は、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたの為に救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」

 

【あなたがたのために】

「あなたがたの為に救い主がお生まれになった」と天使が羊飼い達に知らせたのです。ただ 救い主がお生まれになった」と発表する事が出来ましたが、わざわざあなたがたの為に救い主がお生まれになった」と伝えて下さったのです。つまり主イエスの救いは皇帝の為だけではなく、宗教の指導者達の為だけではなく、エリートの為だけでもありませんでした。救い主は民全体の為に送られました。すなわち、神の救いは全人類の為のものであります。誰にでもその救いが必要であるし、愛する神は誰にでも救いを授けて下さいます。

 

【さあ、ベツレヘムへ】

羊飼い達がその最も素晴らしいお知らせを聞くとどうなさいましたか。彼等は、「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせて下さったその出来事を見ようではないか」と話し合いました。そして、羊飼い達は早速ベツレヘムへ出掛け、マリアとヨセフと赤ちゃんイエスを探しました。しるしになる飼い葉桶に寝かしてあるイエス様の姿を見つけると、彼等は大喜びで、天使が話してくださった事を全部伝えたのです。そして、「羊飼い達は、見聞きした事が全て天使の話したとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った」と記されています。

 

【羊飼い達の応答】

羊飼い達はクリスマスの出来事にどう応えましたか。「私達は誰よりも敬虔なので、天使が我々に現われ、神の救いを発表した」と自慢しませんでした。また、「その出来事は幻想だ。天使は本当に現われなかった」と懐疑的にも反応しなかったのです。その反対に、彼等は喜びと信仰と感謝をもって、その神の御業に応えました。更に彼等は天使から聞いた素晴らしい発表を皆に伝えたのです。神の救いはあまりに善いお訪れなので、彼等は黙ってはいられなかったのです。それは羊飼い達の答えです。

 

そして、赤ちゃんイエスの母マリアはどう応えましたか。18節と19節にこう記されています。「聞いた者は皆、羊飼い達の話を不思議に思った。しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた」と書いてあります。多くの人々は羊飼い達が語った彼ら自身の天使の体験を聞いたのですが、それは何よりも「不思議」だと思って、自分と関係があんまりないと判断して、すぐ忘れてしまいました。その反面マリアは全ての事を心に納めて、思い巡らしていました。つまり、マリアは自分の体験と羊飼い達の証についてよく考えたのです。そして、やがてイエスの身分と使命を悟るとイエス様を信じるようになりました。

 

【クリスマスの御業にどう応えるか】

愛する兄弟姉妹、私達はどのようにクリスマスの御業に応えますか。みなし子ミッシャのようにイエス・キリストは丁度自分の為にこの世に生まれたと確信出来ますか。それとも、羊飼い達のように、喜びと信仰と感謝を持って誕生された御子イエス・キリストを迎えますか。また、マリアのようにクリスマスの「出来事を全て心に納めて、思い巡らし」ますか。実に、クリスマスの時、この三つの応えを持って主イエスを迎えたいと思います。

 

クリスマスの御業は最も大きな喜びであります。私達の為に救い主がお生まれになりました。そのお方は、罪を犯した故に、神の敵になった私達の唯一の救い主になります。イエス・キリストは私達と全人類の真の希望になり、永遠までの祝福になります。「ひとりのみどり子が私たちの為に生まれた。ひとりの男の子が私達に与えられました。」(イザヤ書9章5)

 

この幼子こそが私達の平和と私達の救いであります。この幼子こそが私達と共に宿り、真の生き方を教えられます。この幼子こそが十字架で私達の身代わりになり、神への道を広く開いて下さいます。イエス・キリストを心から信じると、神の御子はあなたの救い、あなたの主、あなたの希望になります。

 

愛する兄弟姉妹、あなたがたの為に救い主がお生まれになりました。(おわり)

2009年12月20日 | カテゴリー: ルカによる福音書 , 新約聖書

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