【一番良いものを得る事】ウイリアム・モーア

マタイ13:45~46 45:また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。 46:高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。

【欲しかったカメラ】
何かの物をどうしても手に入れたいと言う気持ちになった事がありますか。とでも素敵な物を見て、それを欲しくてたまらない程憧れがあった事がありますか。誰でもそのような経験があったと思います。私は中学生の時代、カメラの事で夢中になって、ある新しく出たカメラが欲しかったのです。そのカメラのパンフレットとカタログをよく見て、カメラを触る為に、わざわざ店へ何回も足を運びました。夢にもそのカメラを見る程でした。とにかく、あのカメラをどうしても手に入れたかったのです。しかし、結構高かったので、中学生の私の予算ではなかなか合わなかったんです。でもそのカメラは私の一番憧れる物だったので、どんな犠牲を払っても、それを自分の物にしようと決心をしました。お小遣いを全部貯めて、お金を稼ぐ為に近所のお庭の芝生刈りをして、そして持っていたカメラと他の私の宝物を全部売ってしまいました。そしてようやくカメラの代金を集め、買いに行きました。長く欲しかった物をやっと手に入れた気持ちは何十年が経った今も良く覚えています。

【高価な真珠を見つけた商人】
先ほど読んだ聖書の箇所にイエス様はその同じようなお話を語って下さいました。もう一同読みましょう。マタイ13:45~46。「また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。」

このイエスの譬え話は大変短いです。恐らくこれはイエスの譬え話の中で一番短いものなんですが、その背景には意味深いものがあります。お仕事で宝石商人があちこちへ行って、真珠を探していました。でも、今回は普通の真珠ではなくて、特別に優れた真珠を求めていました。

ところで、その当時はもちろん養殖真珠の時代のずっと前ですから、真珠は珍しく、大変高かったのです。一般の人には夢でも真珠を持つ事は想像も出来ませんでした。普通の小さい真珠はすごく高かったんですが、特別に良い物は大変珍しいですので、信じられない程高かったんです。クレオパトラ、古代エジプトの女王は一つの優れた真珠を持っていました。それは、今のお金で5億円の値打ちがあったんだそうです。とにかく、イエス様の譬え話の商人は色々な所へ行って良い真珠を買い求めました。

ある日、真珠業者から連絡が入りました。「これまで見た事もない、大きな美しい真珠が見つかりました。良かったら見に来て下さい。」商人は早速その所へ飛んで行って、その真珠を見て、びっくりしました。うずらの卵程でっかいし、形も色も完璧でした。確かにこれは世界一の真珠でした。「私に売って下さい」と商人が熱心に頼みました。「でもこれは珍しい唯一の物だから、結構かかるよ」と言われました。「いくらでも払うから、代金を言って下さい。」そして、やはり業者はすごく高い値段を言いました。でも、世界一の真珠を見て、商人はそれをどうしても手に入れたかったんです。その真珠は今までの物とは比べられる物ではありませんでした。「後一週間で代金を持って戻って来るから、他の人に絶対に売らないでちょうだい」と商人が頼んで帰りました。

家に帰るとその代金を調達するように、全ての財産を売り始めました。在庫の宝石や土地や家までも全部売り払い、その値段を集めました。そして業者の所へ戻り、代金を払って、その憧れた唯一の真珠がやっと自分の物になりました。どんなに嬉しかったでしょう。全ての財産を失っても世界一の真珠を得たので、あまりの喜びで帰りました。
イエスは天の国、すなわち神の国はそのようなものに譬えられるとおっしゃいました。イエスはこの譬え話を通して私達に何を教えられるのでしょうか。あの商人が優れた物を見いだすと、どうしてもその物を手に入れたかったのですね。つまり、一番良い物を見ると、どうしても、それが欲しかったのです。全て他の真珠は目に入らなく、あの唯一の物しか考えられませんでした。

【天の国=神の国】
イエスは天の国はそのように譬えられるとおっしゃいました。天の国とは何でしょうか。極端に言えば、天の国と天国は違います。天国は神様から救いを頂いた人の死後の恵まれた状態です。悩みも痛みもないし、永遠に神との直接な交わりが出来ます。でも天の国、すなわち神の国は今ここに、この世にもあります。人間がこの世で唯一の全能の神の愛と交わりを受け入れ、心からその神に従い、主の働きに参加すると、それは天の国です。

天の国に入る事は私達にとって商人が世界一の真珠を求めて手に入れる事ではないでしょうか。考えて見て下さい。天地万物をお造りになり、そして、その中にある全ての物を治めていらっしゃる神です。そして、罪の為に永遠の滅びに向かうしかない私達をイエス様の贖いによって許し、ご自分の愛された子供にして、愛と恵みを持って新しい命を下さいました。現在も、将来も、永遠にも神の豊かな恵みのうちにいるのです。神の国に入ると言う宝のような物を見いだすと、真珠商人と同じような気持ちで、それを自分の物としたいのは当たり前の事です。

【福音という最高に高価な真珠】
この短い例え話は一つの大事な質問を私達に問い掛けていると思います。それは、あの商人がその優れた真珠を高く評価したように、私達は福音を心から愛し、高く評価するのでしょうか。その真珠を得る為に彼が喜んで持ち物をすっかり売り払いましたね。でも福音はあの真珠と比べ、私達はどうあずかっているのでしょうか。真珠は奇麗ですが、ただ牡蛎で作った生きていない石のような物です。しかし、福音は私達の為に唯一の全能の神が賜る永遠の救いなのです。福音を通して私達は神の全ての恵みを頂きました。信仰や、希望や、力や、永遠の豊かな命や、愛などは神が自由に授けて下さいました。確かに、全ての他の事、他の物と比べて遥かに優れた物であります。

うちの家族は家を移った事が沢山あります。結婚して神学生の時から十回以上移ったと思います。引っ越しするたびにだんぼうる箱に山程の物を詰める時、何回も、何回も家内と私は、「どうしてこれを買ったの。本当にいる」とお互いに聞きます。実に、いらない物ばっかりで2/3を失ってもかまわないと思いました。引っ越しする時、もしこの荷物が失ってしまったら、かえって自由になって、恵みになるような気がしました。不思議ですけれども、その物一つ一つを買った時、世界一真珠を得た商人のように喜びましたが、時間が経つと共にその物への愛着心は忘れられ、必要性も無くなり、処分するにも困ってしまいます。

しかし、福音は違います。時間が経つと共に、もっと素晴らしくなります。天の国は世界一の真珠より、遥かに大事な宝なのです。そして、もちろん私と皆様が持っている宝よりもずっと貴重です。
商人は世界一の真珠をどのように得たのでしょうか。持ち物をすっかり売り払い、そして買ったんですね。「持ち物をすっかり売り払う」と言う意味は何でしょうか。あなたは天の国に入る為に財産を全部売らなければならない訳ですか。そうではないと思いますが、天の国、つまり神様との関係が私達に一番にならなければならない訳です。商人があの真珠を何よりも憧れたように、私達は天の国を憧れるべきです。商人にとって、あの真珠は何よりも第一の物でしたので、それを得る為には全ての持ち物をなくしてもかまいませんでした。残念だと思って財産を売ったのではなく、自分の財産より遥かに良い物を得る為ですから、喜んで売ったと思います。

神様の事が第一にならないと天の国に入るのはなかなか難しいです。イエスがこのように言われました。「誰も二人の主人に仕える事は出来ない。一方を憎んで、他方を愛するか、一方に親しんで、他方を軽んじるか、どちらかである。あなた方は、神と富に仕える事は出来ない。」(マタイ6:24)神の事が第一にならないと、礼拝に出席する事さえも難しくなります。その上、時間と献金を捧げ、そしてキリストの良い証になるのはもっと難しいです。しかし、天の国が一番になると、全ては随分楽になります。あなたの生活には何が一番大切ですか。

【真の人生の救援投手】
少し前のお話ですが、ロサンゼルスタイムズ新聞の記事がありました。「真の人生の救援投手」と言う記事でした。日本ではニューヨークヤンキーズと言えば松井選手です。それはニューヨークヤンキーズで8年間救援投手をしていたテイームバークと言う人の記事でした。彼は人気もあって、結構全てがうまく行っていたのでしたが、彼は急に野球を止めると宣言しました。理由は何ですかと聞いたところ、彼には養育しなければならに子供が沢山いるからだそうです。その彼の子供達と言えば5人いるのですが、二人は韓国から、二人は南米のガテマラから、一人はアメリカからですが、重い障害を持っている子供でした。皆な孤児で、誰も世話してくれる人がいない子供達を引き取って育てていたのです。彼は子供達の為に年収数百万ドルの職場を止めると言うのです。もっと驚く事はこれです。リポータが聞きました。「あなたはその華やかな職場を止めて、みすぼらしい子育てを選んだ理由ですが、何があなたをそうさせたのですか。すると彼はこう言いました。「結局、問い詰めると私達皆は孤児のようでした。しかし、神は孤児の私達を愛し、養子にして、今日に至るまで来たのではないでしょうか。」

テイームバーク選手はより良いもの選んで、天の国の為に大きな働きをなさっています。彼は譬え話の商人のようです。
どうでしょうか。私達も真珠商人のような人ですか。天の国は世界一の真珠より遥かに素晴らしいのですか。そうです。私達の宝よりもずっと貴重です。ぜひその一番貴重な宝を取ってみて下さい。そうすると、一番大事な物は自分の物になります。そして、イエス・キリストの素晴らしい約束「先ず神の国と神の議とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、全て添えて与えられるであろう」(マタイ6:33)は、あなたの生活に実現されるのであります。

2004年01月11日 | カテゴリー: マタイによる福音書 , 新約聖書

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