市川康則より「望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認する ― ２０２４年の教会標語 ―」

　今年（主の2024年）の教会標語は、ヘブライ人への手紙11章１節の御言葉「信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認することです」に基づいています。

　信仰があると言えば、一般に、偉い人・立派な人と思われたり、反対に、弱い者だ、何かに縋(すが)らなければならないと思っているからだと見られたりします。

　しかし実は、信仰はすべての人間に備わっている能力・機能です。例えば電車に乗るとき、時刻表通りに目的の駅に着くことを信じ切っています。途中で事故に遭うかもしれないと思ったら、乗れません。また、人と会話をしているとき、相手の言っていることが本当であると無自覚に前提しています。もし疑い出したら、会話も信頼関係も成り立ちません。見ていないのに、確かめた訳でもないのに信じることは、人間の普遍的な機能であり、共同生活の基礎なのです。

　その上で、その信仰が特定の教え・思想を持ち、特定の儀式や制度を持つとき、宗教となります。そして、宗教は決して宗教“一般”として存在しているのではなく、特定の具体的なものとして現れ、機能しています。キリスト教もその一つです。

　人は神のかたちとして創造されました。父・子・聖霊の三位一体の神様の間には相互の信頼と交わりがあります。それゆえ、人間も本来、信頼関係の中で、すなわち信仰によって生きるものなのです。しかし、神様への敵対である罪への堕落は、神様との関係は固(もと)より、人間相互の間での嘘(うそ)・偽りや、疑い・不信感をもたらしました。それゆえに、このように悪化した人間の機能と相互の関係が再び回復し、本来の在り方・生き方に戻ることができるためには、神様への立ち返りと信頼（信仰）、それに基づく互いの信頼と受容が不可欠です。

　そして、これを実現すべく、主イエス・キリストが人としてこの世に来られ、罪人の代表として、身代わりに、人間の罪に対する神の裁きを受けられたのです。古来、神（々）の権(ごん)化(げ)や化(け)身(しん)という思想はありますが、それは、人の上に立ち、人を支配したり、教えたりする神（々）です。しかし、旧・新約聖書の宗教（キリスト教）にあっては（キリスト教においてのみ）、高さの極みの方が低さの極みに来られたことが明確に教えられています。本当に高い存在であればこそ、徹底的に低くなれるのです。

　教会標語が基づいている聖句は、信仰の本質について極めて適切に、また本質的なことを教えています。「望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認する」ことは、正に創造の初めに与えられた人間の本性に基づいており、人間の本来の“人間らしさ”を表しています。

　私たちが信じること・望むことは、自分に都合がいいことではなく、神様の栄光が現れ、教会がキリストの復活の体として成長して行くこと、そしてそれに仕えるために自分自身の願い・望みが実現することです。

　私たちの教会には様々な必要がありますが、特に後任牧師の招聘は喫(きっ)緊(きん)の課題です。招聘委員会が働いていますが、なお目(め)処(ど)が立っていません。しかし、神様は御心に従って、ふさわしい時にふさわしい人をお遣(つか)わしくださることを信じます。まだ見ていないことですが、望んでいることです。標語が基づく御言葉に支えられ促されながら、本年の教会形成と信仰生活に共々に励みましょう！

（※今号には、定期会員総会の資料として配布される『年報』の中の「2024年度教会標語」を載せました。『年報』は現住陪餐会員にのみ配布されますので、他の方々にも今年の教会標語についてのコメントをご覧いただくためです。なお、ルビを少し加え、読点[、]の位置も少し変えました。）