2021年08月22日「命の書」

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聖句のアイコン聖書の言葉

2 わたしはエボディアに勧め、またシンティケに勧めます。主において同じ思いを抱きなさい。
3 なお、真実の協力者よ、あなたにもお願いします。この二人の婦人を支えてあげてください。二人は、命の書に名を記されているクレメンスや他の協力者たちと力を合わせて、福音のためにわたしと共に戦ってくれたのです。
フィリピの信徒への手紙 4章2節~3節

原稿のアイコンメッセージ

パウロはエボディアとシンティケという二人の婦人の名前を挙げて、「同じ思いを抱きなさい」との勧めを語ります。「勧める」という言葉そのものは珍しい表現ではありませんが、「エボディア、あなたに勧めます」「シンティケ、あなたに勧めます」とそれぞれに同じように勧めているのは大変丁寧な言い方です。二人に別々に「勧めます」と語るのは、この二人に対する、ある配慮が働いていると考えることができます。というのは、およそ争いや対立が起こるとき、どちらか一方だけが悪くて他方だけが正しいということは無いからです。ですからパウロは両者に対してひとりひとり、「あなたに勧めます」また「あなたに勧めます」と、このように語るのです。

彼女たちに「同じ思いを抱きなさい」と命じているということは、反対に言えば、二人の間には別々の違った思いがあるということが想像できます。さらに、パウロがそれをフィリピ教会の手紙に敢えて書き記しているということは、これは個人の間のトラブルというだけに留まらない、教会全体に関わる問題として受け止めて、ここで勧めを述べているのだとわかるのです。

彼女たちに何があったのかを聖書は記していません。もしかしたら、記す必要がないほど発端は些細なことだったのかもしれません。具体的なトラブルの内容はわかりませんが、教会は様々な背景をもった人たちの集まる群れでありますから、個人的な「いさかい」が教会全体を取り巻くトラブルに発展することは起こり得ます。けれどもパウロはあくまでも神様から罪を赦されて、神様と和解させられた者として、神様の慰めと励ましをもって相手に勧めを語ります。

パウロは当事者である二人だけでなく、群れの指導者にも勧めを語ります。パウロは「真実の協力者よ」と呼びかけています。「協力者」と訳されている言葉は、「共に軛を負う者」という意味です。つまり、二人の婦人たちが負っている軛をしっかり受け止めて助けるように、と言っているのです。

何かトラブルが起こった時に、「そんなことではダメだ!イエス様を見なさい!イエス様のようにへりくだって、仲良くしなさい!」…と、言うのは簡単です。けれども、このように上から命じるだけでは、彼女たちが本当に何を感じ、何を思い、争いに至ってしまったのか、彼女たちの抱えている重荷を知って共に担うことにはならないでしょう。彼女たちは、3節に記されているように、もともとは福音のために一生懸命共に戦ってきた人たちなのです。この彼女たちの負っている軛を、心の内側にあるものを、よく聞き取り、支えていこうとする姿勢が大切です。

何よりも、彼女たちもまた神様が「ご自分のもの」とされた人たちであり、その名前が「命の書」に記されている人たちです。命の書に名前が記されているとは、神様の救いの歴史の中に確かに名前が刻まれている、ということです。神様がご自分のものとされ、失われてはならないと見ておられるのです。ですから、この問題を受け止めるのには忍耐がいりますが、私たちは、その神様の顧みを信じて、神様の助けに信頼をして、とりなし合い、助け合う、そのような群れへと成長させられていきたいと願っています。