2025年11月16日「神の国への入国資格」

2025年11月16日　説教要約　マルコ10章23-31　神の国への入国資格

先週は 金持ちの議員がイエス様に「永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか」と質問し、イエス様がそれにお答えになった話でした。イエス様は、この議員に、永遠の命を受け継ぐことができる生き方とは、神の愛と慈しみを信じて、神により頼む生き方。神を第一とする歩みだ、ということを教えようとなさいました。
それで、彼が最も信頼し、頼りにしている「財産」を売り払って、貧しい人に施し、それから私に従うように言われたのです。しかし、彼はイエス様の言葉を聞いて、悲しみながら去っていきました。彼が一番頼りにしていたのは、自分が手にしている財産、彼は富への執着、依存から離れることができなかったからです。
今日はその続きです。

金持ちの男が去った後、イエス様はこう言われました。
10:23ｂ「財産のある者が神の国に入るのは、なんと難しいことか。」弟子たちが驚いていると、イエス様の言葉はさらに続きました。
10:24ｂ-25「子たちよ、神の国に入るのは、なんと難しいことか。金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」
実は、当時のユダヤ人に身近な動物の中で、一番大きなものがラクダだそうです。つまり、金持ちが、自分の財産への執着を捨てるのは難しい、いや不可能だ、と言ったのと同じことです。
金持ちは、お金の力をよく知っています。お金があれば大概のものは手に入ります。衣食住に困ることは、普通の状況ではあり得ません。病気になっても、名医にかかることができ、いい治療、いい薬を求めることができます。彼は今までの人生において、何か不足する、困る、という経験はほぼなかったはず。彼は自分の人生に満足し、神により頼むということを知らなかったのでしょう。
しかし、お金があっても、財産があっても、どうにもならないことがあります。大災害に出会うこともあるし、お金を積んでも治らない病気もある。年を重ねれば体は衰えていきます。特に、地上の命の問題は、財産があってもどうすることもできません。そういうことに出会ったときに、彼はこの時のイエス様の言葉を思い出すことでしょう。
ですが、この時点で、彼はまだイエス様の言葉を理解できず、ましてや受け入れる心の準備はできていなかったのです。

ここまでの話を聞いて、弟子たちはつぶやきました。
10:26 弟子たちはますます驚いて、「それでは、だれが救われるのだろうか」するとイエス様はこう言われたのです。
10:27 イエスは彼らを見つめて言われた。「人間にできることではないが、神にはできる。神は何でもできるからだ。」
「永遠の命を受け継ぐには、神の愛と慈しみを信じて、神により頼む生き方。神を第一とする歩みが必要だ」と、今日の話の最初にも確認しました。
つまり、「この世への執着を捨てて、神の愛と慈しみを信じ、神により頼む」心に、変わる必要がある。価値観、あるいは人生観の転換が必要なのです。

永遠の命を受け継ぐ、神の国に入る、救われる、これはみな一つのことです。
そして、この恵みを受けとるには、価値観の転換が必要です。
今、わたしたちが手にしている財産、衣食住、才能、仕事、家族、地上での命、体、健康、それらは偶然手に入れたものでも、あるいは自分の力で得たものでもなく、全て神から与えられているもの、神の許しがあって、いただいているもの、という認識が必要です。そのことが心にはまれば、まことの神により頼む生き方になるはずです。
ところが、私たちはなかなかそれに気づかないのです。
ですが、神は、それぞれの人にいろんなタイミングで、それを気づかせてくださいます。私たちがその時々で置かれた状況と、神の言葉である聖書を通してです。
聖書を通して、神は私たちに語っておられ、聖霊の働きがあって、必要な気づきが与えられ、そして心が変えられ、価値観が変えられるのです。
人間にとってこれは、簡単なことではありませんが、しかし、神にはできます。
「人間にできることではないが、神にはできる」のです。

すると突然、ペトロが話題を変えました。28節以下です。
28節。「このとおり、わたしたちは何もかも捨ててあなたに従って参りました」と言いだしたのです。自分たちは、財産を頼りにしていません。何もかも捨ててあなたに従ってきましたから、神の国をいただけるんですよね、と言いたいのでしょう。

確かに、ペトロは主イエスに声をかけられた時、漁師という仕事を捨て、また両親や家を離れてイエス様に従いました。また、その場にいた弟子たちも、皆、特殊な状況下で、イエス様に声をかけられ、従った者たちです。ですが、福音書には、その後、ペトロとイエス一行がペトロの家に立ち寄った話や、ペトロの姑の話などが記されています。ということは、きれいさっぱり縁を切る、捨て去るというようなことではなかったことがわかります。また、十戒には「父母を敬え」という教えがあり、また夫と妻が助け合って生きることは神が定められた創造の秩序です。
ですから、神に従うこと＝家や妻や家族と縁を切る、捨てる、ことではありません。人によって、求められる従い方は違うのです。
ここでイエス様が教えておられるのは、価値を置くべき優先順位です。この世の財産や富、名誉やそれ以外の諸々の物は、必要であれば神が与えてくださいますから、それらに執着して、やきもきする必要はない、というメッセージでもあります。

そして、イエス様は言葉を続けます。
18：29ｂ-30神の国のために、家、妻、兄弟、両親、子供を捨てた者はだれでも、この世ではその何倍もの報いを受け、後の世では永遠の命を受ける。」と。
たとえ、神に従うために、家、妻、兄弟、両親、子供を捨てなければならない状況になったとしても、この世でその何倍も報いを受けること、さらに後の世で永遠の命を受けることが約束されているのです。

また、ここで覚えたいことは、この御言葉を言い訳にして、簡単に夫や妻、兄弟、両親、子供を捨ててはならない。家族の救いをあきらめてはいけない、ということ。
むしろ、今神が与えてくださっている地上の家族のつながりを大切にして、家族の救いのために心を尽くして祈り、執り成し、証しすることが、求められている神のミッションです。この箇所は、決して家族を捨てる、家族の救いをあきらめる、ということを求めているのではありませんから、私たちはここを言い訳にしてはいけない！！と強調しておきたいと思います。

必要なことは、毎回お話ししている通り。み言葉を聞き続けること、聞いて受け入れること、聞いて従うことです。そうしている中で、み言葉と共に聖霊が働いてくださり、神が私たちの心を、価値観を変えてくださいます。
私たちの心が、まことの神を信じる信仰へと、イエスに従う歩みへと変えられて、神の国、永遠の命へと移されるのです。それは、人間の力でできることではありませんけれど、神にはできるのです。

最後の31節も観ておきましょう。10:31「 しかし、先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者が先になる。」
ここで「先にいる者」とは、何もかもを捨ててイエスに従って来たと自称している弟子たちのこと。「後にいる者」は、幼子や、徴税人や、遊女など、彼らが罪人と見下してきた人々の中で、イエス様に従った人々のこと。
以前弟子たちが、「だれが一番偉いか」と言い争い、今ここでは去って行った青年を尻目に得意げに胸を張る、弟子たちへの警告、そして、私たちへの警告の言葉としても読むことができます。

私たちも、それぞれに自分の歩みを省みて、何を優先し、何に価値を置いて生きていくのかを、しっかりと確認いたしましょう。
「神の国への入国資格」は、「神の愛と慈しみを信じて、神により頼む生き方。神を第一とする歩み」なのです。