2023年03月26日「人の心を開く言葉」

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人の心を開く言葉

日付
説教
木村恭子 牧師
聖書
使徒言行録 16章11節~15節

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わたしたちはトロアスから船出してサモトラケ島に直航し、翌日ネアポリスの港に着き、そこから、マケドニア州第一区の都市で、ローマの植民都市であるフィリピに行った。そして、この町に数日間滞在した。
安息日に町の門を出て、祈りの場所があると思われる川岸に行った。そして、わたしたちもそこに座って、集まっていた婦人たちに話をした。
ティアティラ市出身の紫布を商う人で、神をあがめるリディアという婦人も話を聞いていたが、主が彼女の心を開かれたので、彼女はパウロの話を注意深く聞いた。そして、彼女も家族の者も洗礼を受けたが、そのとき、「私が主を信じる者だとお思いでしたら、どうぞ、私の家に来てお泊まりください」と言ってわたしたちを招待し、無理に承知させた。日本聖書協会『聖書 新共同訳』
使徒言行録 16章11節~15節

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<説教要約> 使徒言行録16章11-15節「 人の心を開く言葉 」 
今日からいよいよヨーロッパでの伝道です。
11、12節。「わたしたちはトロアスから船出してサモトラケ島に直航し、翌日ネアポリスの港に着き、そこから、マケドニア州第一区の都市で、ローマの植民都市であるフィリピに行った。そして、この町に数日間滞在した。」
ルカも含めた一行は、トロアスから船でエーゲ海を渡り、サモトラケ島経由でネアポリスという港に着きました。そこからフィリピに向かったのです。「マケドニア州第一区の都市で、ローマの植民都市」とあります。フィリピは、近くに金鉱があったことで発展した町で、この町は軍事上、また通商上も主要な位置を占めていました。

ここまでのパウロの伝道スタイルは、初めての町へ行くとまずユダヤ教会堂で伝道を始めます。
ところが、この町にはユダヤ教の会堂はなかったようです。それで13節。「安息日に町の門を出て、祈りの場所があると思われる川岸に行った。そして、わたしたちもそこに座って、集まっていた婦人たちに話をした。」 この町にはユダヤ人が多くなかったのでしょう。それで安息日になると、祈りの場と思われる川岸に行って集まった人と一緒に祈ったのです。
その日そこにいたのは婦人たちだけ。男性はいませんでした。パウロは、「集まっていた婦人たちに話をした」のです。

その中に、リディアという婦人がいました。14節「ティアティラ市出身の紫布を商う人で、神をあがめるリディアという婦人も話を聞いていたが、主が彼女の心を開かれたので、彼女はパウロの話を注意深く聞いた。」彼女は、「ティアティラ市の出身」そして「神を崇める人」さらに「紫布を商う人」という説明があります。ティアティラ市はアジア州の町。「神を崇める人」とは、ユダヤ人ではないがユダヤ教の神、旧約聖書の神を信じている人のこと。つまり彼女は、アジア州に住む異邦人女性で、旧約聖書の神を信じており、紫布を商うという職業を持った自立した女性でした。この人が、安息日に出張先で祈っていたら、たまたまパウロに出会って、イエス・キリストの福音を聞いたのです。
しかし、これは偶然の出来事、たまたまではありません。神がこの場に彼女を導いて、パウロと出会わせたのです。「主が彼女の心を開かれたので、彼女はパウロの話を注意深く聞いた。」とルカは記しています。
聖霊の働きがあって、彼女の心がパウロの言葉に向かって開かれた。また、彼女の方もパウロの言葉を注意深く聞いたのです。

語られていることが真実で、受け入れるに足るものなのか、真剣に、注意深く彼女は話を聞きました。
その結果、この言葉は真実で受け入れるにたるものと確信し、信じる者ものとされたということです。果たして、たった一度福音を聞いただけで、洗礼の決心にまで至るのだろうか、と思います。
ですが、彼女には信仰の下地がありました。彼女は旧約聖書を知っており、唯一まことの神を信じていたのです。そして、この日も、神に祈るために川岸にいたのです。
この川岸、祈りの場でパウロと出会い、パウロの話を聞いて、旧約聖書にしるされていることと、イエス・キリストが結びついて、キリストを信じる信仰を持つことができたのです。
この時突然パウロの話を聞いて、その場で信じた、ということではないのです。神がこの女性の心に信仰への備えをしておられ、そういう中でパウロの話を聞いて信仰を持ち、洗礼を受けるに至ったのです。
ここで言えることは、信仰は一足飛びには生まれない、ということです。日ごろから様々な語りかけや準備がなされ、それが聖霊によって結びあわされたときに初めて信仰が生まれるのです。

15節。そして、彼女も家族の者も洗礼を受けたが、そのとき、「私が主を信じる者だとお思いでしたら、どうぞ、私の家に来てお泊まりください」と言ってわたしたちを招待し、無理に承知させた。
それでも、14節から15節がいきなりの展開だなあと思いませんか?
たぶん、リディアがパウロの話を聞いて、イエス・キリストを信じる信仰へと導かれ、すぐにその場で洗礼式、ということではないでしょう。
だって、その場でパウロの話を聞いたのはリディアだけですから。15節では、家族も一緒に洗礼を受けたと記されていますので、この後改めて、家族も一緒にパウロの話を聞いて、そして洗礼、という運びになったはずです。
ですが、この話にはまだ先があります。リディアは、一行を自宅に招いてフィリピでの宿を提供したのです。
リディアはアジア州ティアティラし市出身でしたから、多分自宅はそこにあると思われます。そして彼女は紫布商人でしたから、このフィリピにも泊まれるところ、店か倉庫のようなものがあったのかもしれません。
そこへ、パウロたちを招待し、宿を提供したい、と申し出たのです。ですがいくら招待されたからと言って、女性の家に男4人が泊まるのはパウロたちも気が引けたのでしょう。最初は遠慮したのだと思います。しかし、リディアは「私が主を信じる者だとお思いでしたら、どうぞ、私の家に来てお泊まりください」と言うのです。最初遠慮していた一行も、その言葉を聞いて、同じイエス・キリストを信じる者として、彼女の思いを受け入れることにしました。「わたしたちを招待し、無理に承知させた。」という言葉からそのことが想像できます。一行がリディアの家で寝泊まりする間、さらに詳しく福音を知らされ、また親しい主にある交わりが生まれ、やがてこの場所がフィリピ教会になっていったのです。これが、ヨーロッパ伝道の始まりです。この家が、ヨーロッパで最初の教会です。そしてパウロの伝道による、ヨーロッパで最初の信者はリディアという異邦人の女性でした。彼女に信仰が与えられ、やがてここから教会が誕生し、またこの後、この教会はパウロの伝道を支援していったことが、聖書にしるされています。

今日の話では、三つのことを覚えたいと思います。
パウロは福音宣教に燃えていましたが、町の広場や通りで、いきなりキリストの福音を語ったのではありません。人々の心が神に向かっている場、ユダヤ教会堂や祈りの場を選んで伝道しました。ここから、次のことを覚えたいと思います。伝道するには、時と場所、また相手の心の状態を考えることが大切です。
その人の心が、神に向かいやすい時、あるいは神に向かいやすい場所、タイミングを見極めて語ること。
ただむやみやたらに福音を語ればいい、ということではありません。
さらに、13節には、「わたしたちもそこに座って、集まっていた婦人たちに話をした」とあります。パウロたちは婦人たちに近づいて、話をしました。多分自己紹介をしたことでしょう。自分たちがアンティオキア教会から来たこと。イエスキリストの話をしていること。また、婦人たちの話も聞いたかもしれません。そして一緒に祈ったと思うのです。そのあとで、パウロが語りだした。たぶんそんな流れだと思います。
上から目線で語ったのではなく、同じように腰かけて、彼女たちの心に届く語りかけをしたのだと思います。
こういうことも、大切ですよね。
もう一つ、覚えたいのは、ヨーロッパで最初の教会は、一人の女性の働きが用いられたということです。
こんな風に女性の働きが用いられたことも感謝して覚えたいと思います。

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