ヤコブの結婚 2013年5月12日(日曜 夕方の礼拝)

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ヤコブの結婚

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
創世記 29章14節~30節

聖句のアイコン聖書の言葉

29:14 ヤコブがラバンのもとにひと月ほど滞在したある日、
29:15 ラバンはヤコブに言った。「お前は身内の者だからといって、ただで働くことはない。どんな報酬が欲しいか言ってみなさい。」
29:16 ところで、ラバンには二人の娘があり、姉の方はレア、妹の方はラケルといった。
29:17 レアは優しい目をしていたが、ラケルは顔も美しく、容姿も優れていた。
29:18 ヤコブはラケルを愛していたので、「下の娘のラケルをくださるなら、わたしは七年間あなたの所で働きます」と言った。
29:19 ラバンは答えた。「あの娘をほかの人に嫁がせるより、お前に嫁がせる方が良い。わたしの所にいなさい。」
29:20 ヤコブはラケルのために七年間働いたが、彼女を愛していたので、それはほんの数日のように思われた。
29:21 ヤコブはラバンに言った。「約束の年月が満ちましたから、わたしのいいなずけと一緒にならせてください。」
29:22 ラバンは土地の人たちを皆集め祝宴を開き、
29:23 夜になると、娘のレアをヤコブのもとに連れて行ったので、ヤコブは彼女のところに入った。
29:24 ラバンはまた、女奴隷ジルパを娘レアに召し使いとして付けてやった。
29:25 ところが、朝になってみると、それはレアであった。ヤコブがラバンに、「どうしてこんなことをなさったのですか。わたしがあなたのもとで働いたのは、ラケルのためではありませんか。なぜ、わたしをだましたのですか」と言うと、
29:26 ラバンは答えた。「我々の所では、妹を姉より先に嫁がせることはしないのだ。
29:27 とにかく、この一週間の婚礼の祝いを済ませなさい。そうすれば、妹の方もお前に嫁がせよう。だがもう七年間、うちで働いてもらわねばならない。」
29:28 ヤコブが、言われたとおり一週間の婚礼の祝いを済ませると、ラバンは下の娘のラケルもヤコブに妻として与えた。
29:29 ラバンはまた、女奴隷ビルハを娘ラケルに召し使いとして付けてやった。
29:30 こうして、ヤコブはラケルをめとった。ヤコブはレアよりもラケルを愛した。そして、更にもう七年ラバンのもとで働いた。創世記 29章14節~30節

原稿のアイコンメッセージ

 今夕は創世記の29章14節後半から30節より、御言葉の恵みにあずかりたいと願っております。

 ヤコブがラバンのもとにひと月ほど滞在したある日、ラバンはヤコブにこう言いました。「お前は身内の者だからといって、ただで働くことはない。どんな報酬が欲しいか言ってみなさい」。ヤコブはラバンの家においてもらっている間、身内のものとしてただで働いておりました。しかし、ラバンは、「どんな報酬が欲しいか言ってみなさい」と言うのです。おそらく、ラバンはヤコブの働きぶりを見て、これからも自分のもとで働いてもらいたいと願ったのでしょう。それでラバンはヤコブに「どんな報酬が欲しいか」と尋ねるのです。

 ところで、ラバンには二人の娘があり、姉の方はレア、妹の方はラケルと言いました。「レアは優しい目をしていたが、ラケルは顔も美しく、容姿も優れていた」ためでしょうか。ヤコブはラケルを愛していたので、「下の娘のラケルをくださるなら、わたしは七年間あなたのところで働きます」と言いました。妹のラケルは、前回のお話しにも出てきましたが、おそらくヤコブは、ラケルを一目見て好きになったのだと思います。それで、ヤコブは、「下の娘のラケルをくださるなら、わたしは七年間あなたの所で働きます」と申し出るのです。ラバンはヤコブに「どんな報酬を与えたらよいか」と尋ねたわけですが、ヤコブはラバンに、下の娘ラケルとの結婚を条件に、七年間ただ働きすることを申し出るのです。これは、ヤコブが結納金に当たるものを何も持たなかったためであります。24章に記されているアブラハムの僕は、金の鼻輪や金の腕輪といった高価な贈り物を携えておりましたが、ヤコブはそのような高価な贈り物は何一つ持っていませんでした。ですから、彼は、結納金として七年間ラバンのもとでただ働きをすることを申し出たのです。それに対してラバンはこう答えました。「あの娘をほかの人に嫁がせるより、お前に嫁がせる方が良い。わたしの所にいなさい」。ここで、ラバンは「あの娘」と言っており、「ラケル」という名前を口にしていないことに注意したいと思います。ラバンにとっては、身内であるヤコブに娘を嫁がせる方が、結婚してからも身内でいられるので、都合がいいわけです。それで、「わたしの所にいなさい」と言うのですが、この答えもあやふやな答えであります。ラバンには考えがあって、わざとあやふやな、どのようにも解釈できるような返答をしているわけです。しかし、ヤコブはそれを好意的に解釈しまして、ラケルのために七年間働きました。七年間は長い年月でありますが、ヤコブはラケルを愛していたので、それはほんの数日のように思われたと記されています。

 ヤコブはラバンにこう言いました。「約束の年月が満ちましたから、わたしのいいなずけと一緒にならせてください」。ここで「いいなづけ」とありますように、ヤコブとラケルは婚約関係にあったわけです。少なくとも、ヤコブはそのように考えていたわけであります。ですから、ラバンのもとで働いた七年間は、長い婚約期間でもあったのです。その時が満ちて、とうとう一緒になる、肉体関係を持つ時が来たわけです。ラバンは、土地の人たちを集めて祝宴を開きました。そして、夜になると、上の娘レアをヤコブのもとに連れて行ったので、ヤコブは彼女のところに入った。すなわち、彼女と肉体関係を持ったのです。ところが、朝になってみると、それはレアであったのです。ヤコブはラバンに「どうしてこんなことをなさったのですか。わたしがあなたのもとで働いたのは、ラケルのためではありませんか。なぜ、わたしをだましたのですか」と言うと、ラバンはこう答えました。「我々の所では、妹を姉より先に嫁がせることはしないのだ。とにかく、この一週間の婚礼の祝いを済ませなさい。そうすれば、妹の方もお前に嫁がせよう。だがもう七年間、うちで働いてもらわねばならない」。ヤコブは「なぜ、わたしをだましたのですか」と言うのに対して、ラバンは、「我々の所では、妹を姉より先に嫁がせることはしない」という土地の慣習を持ちだします。そのような慣習があるならば、ヤコブがラケルとの結婚を願い出た時に言ってくれればよいのですが、ラバンはおそらく初めからそのつもりで、わざとあやふやな答えをしたのだと思います。つまり、初めからラバンは、ヤコブがラケルを愛していることをお見通しであったのです。そのことを知っていて、ラバンはヤコブに、「どんな報酬が欲しいか言ってみなさい」と持ちかけたのです。

 ヤコブはレアのところに入って、彼女と肉体的な関係を持ったわけですから、法的にも結婚したこととなります。ですから、ラバンは「とにかく、この一週間の婚礼の祝いを済ませなさい」と言うのです。婚礼にはその土地の人々が招かれておりましたから、ヤコブには婚宴を中止にして、レアとの関係を解消することなどできないわけです。いわば、婚宴に招かれているすべての人々が、ヤコブとレアの結婚の証人となったのです。そのようにして、ラバンは村の人々すべてを自分の味方としたわけです。ヤコブは言われたとおり、一週間の婚礼の祝いを済ませると、ラバンは下の娘ラケルもヤコブの妻として与えました。こうして、ヤコブはラケルをめとることができたのです。

 ラバンは、ヤコブをだまして、上の娘レアを妻として与えることによって、もう七年間ヤコブを自分のもとでただ働きさせることに成功しました。しかし、ヤコブはレアよりもラケルを愛したのです。ヤコブのラケルに対する愛は変わることはありませんでした。そして、ヤコブは愛するラケルのために、もう七年ラバンのもとで働いたのです。

 今夕の御言葉を読みますとき、私たちはかつて、ヤコブが目の見えない父イサクをだましたことを思い起こします。ヤコブはラバンに「なぜ、わたしをだましたのですか」と言いますが、おそらく、ヤコブにとってだまされたのは初めての経験だったのではないでしょうか?そして、ヤコブはだまされたことによって、初めて、だまされた者の気持ちを理解したのだと思います。信頼している人にだまされることは、とてもつらく、悲しいことです。ヤコブはラバンにだまされることによって、かつて自分が父イサクをだまし、兄エサウを出し抜いたことが彼らをどれほど傷つけたかを知ったのです。ヤコブがラバンを追及することができなかったのは、かつて自分も父イサクをだまし、兄エサウを出し抜いたことを知っていたからです。このようにしてヤコブは、自分の罪を神様から示されるのです。

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