サラの死と埋葬 2012年10月21日(日曜 夕方の礼拝)

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サラの死と埋葬

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
創世記 22章20節~23章20節

聖句のアイコン聖書の言葉

22:20 これらのことの後で、アブラハムに知らせが届いた。「ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました。
22:21 長男はウツ、その弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、
22:22 それからケセド、ハゾ、ピルダシュ、イドラフ、ベトエルです。」
22:23 ベトエルはリベカの父となった。ミルカは、アブラハムの兄弟ナホルとの間にこれら八人の子供を産んだ。
22:24 ナホルの側女で、レウマという女性もまた、テバ、ガハム、タハシュ、マアカを産んだ。
23:1 サラの生涯は百二十七年であった。これがサラの生きた年数である。
23:2 サラは、カナン地方のキルヤト・アルバ、すなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。
23:3 アブラハムは遺体の傍らから立ち上がり、ヘトの人々に頼んだ。
23:4 「わたしは、あなたがたのところに一時滞在する寄留者ですが、あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」
23:5 ヘトの人々はアブラハムに答えた。「どうか、
23:6 御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません。」
23:7 アブラハムは改めて国の民であるヘトの人々に挨拶をし、
23:8 頼んだ。「もし、亡くなった妻を葬ることをお許しいただけるなら、ぜひ、わたしの願いを聞いてください。ツォハルの子、エフロンにお願いして、
23:9 あの方の畑の端にあるマクペラの洞穴を譲っていただきたいのです。十分な銀をお支払いしますから、皆様方の間に墓地を所有させてください。」
23:10 エフロンはそのとき、ヘトの人々の間に座っていた。ヘトの人エフロンは、町の門の広場に集まって来たすべてのヘトの人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。
23:11 「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。あそこにある洞穴も差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところで、あなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください。」
23:12 アブラハムは国の民の前で挨拶をし、
23:13 国の民の聞いているところで、エフロンに頼んだ。「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます。」
23:14 エフロンはアブラハムに答えた。「どうか、
23:15 御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シェケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください。」
23:16 アブラハムはこのエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々が聞いているところで言った値段、銀四百シェケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡した。
23:17 こうして、マムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、
23:18 町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち会いのもとに、アブラハムの所有となった。
23:19 その後アブラハムは、カナン地方のヘブロンにあるマムレの前のマクペラの畑の洞穴に妻のサラを葬った。
23:20 その畑とそこの洞穴は、こうして、ヘトの人々からアブラハムが買い取り、墓地として所有することになった。創世記 22章20節~23章20節

原稿のアイコンメッセージ

 今夕は、創世記第22章20節から第23章20節より、御言葉の恵みにあずかりたいと願っております。

 第22章20節から24節までをお読みします。

 これらのことの後で、アブラハムに知らせが届いた。「ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました。長男はウツ、その弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、それからケセド、ハゾ、ピルダシュ、イドラフ、ベトエルです。」ベトエルはリベカの父となった。ミルカは、アブラハムの兄弟ナホルとの間にこれら八人の子供を産んだ。ナホルの側女で、レウマという女性もまた、テバ、ガハム、タハシュ、マアカを産んだ。

 ここには、「ナホルの子孫」について、系図という形ではなく、知らせという形で記されております。第11章に、「テラの系図」が記されておりましたが、「テラにはアブラハム、ナホル、ハランが生まれた」とありますように、ナホルはアブラハムの弟でありました。20節に、「ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました」とありますから、おそらく、アブラハムは弟のナホルに、サラとの間にイサクが生まれたことを伝えるために人を遣わしたのでありましょう。その人が、ナホルの子孫についての知らせを持ち帰って来たのです。ここで、注目すべきは、23節の「ベトエルはリベカの父となった」という記述であります。リベカは、後にイサクの嫁となる女性でありますが、その予告として、ここに記されているわけです。また、21節に、「アラムの父ケムエル」とありますが、このナホルの子孫は、元々はアラム人の十二人の首長の系図であったと言われています。ナホルの妻ミルカが8人の子供を産み、側女のレウマが4人の子供を産みましたから、ここには12人の名前が記されているわけです。第25章に、「イシュマエルの系図」が記されていますが、そこでも12人の名前が記されておりまして、「彼らはそれぞれの部族の十二人の首長であった」と結ばれています。12人という人数は、部族の首長を表す数でありまして、「ナホルの子孫」の知らせは、元々は、アラム人の首長の系図であったと考えられているのです。

 第23章1節、2節をお読みします。

 サラの生涯は百二十七年であった。これがサラの生きた年数である。サラは、カナン地方のキルヤト・アルパ、すなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。

 サラは127歳で、カナン地方のヘブロンで死にました。アブラハムはサラよりも10歳年上でありましたから、このとき137歳でありました。また、イサクはサラが90歳の時に産んだ子でありますから、このとき37歳になっていたはずです。聖書は、サラの死について、あっさりと記しておりますが、これはヘブライ人が人の死を当然のことと考えていたからであったと思います。もちろん、「アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ」とありますように、人生の伴侶である妻の死は、アブラハムにとって大きな悲しみでありました。しかし、アブラハムは悲しみの中に沈み込むことはありませんでした。アブラハムには、サラの遺体を葬るというなすべきことがあったからです。

 3節から6節までをお読みします。

 アブラハムは遺体の傍らから立ち上がり、ヘトの人々に頼んだ。「わたしは、あなたがたのところに一時滞在する寄留者ですが、あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」ヘトの人々はアブラハムに答えた。「どうか、御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません。」

 ヘトの人々とは、ヘブロンに住んでいた先住民のことであります。アブラハムは、ベエル・シェバからヘブロンに移り住んでおり、このヘブロンで妻サラは127年の生涯を閉じたのでありました。ここには記されておりませんが、10節に、「町の門の広場に集まって来たすべてのヘトの人々が聞いているところで」とありますように、アブラハムは、町の門の広場に行き、ヘトの人々に頼んだのです。町の広場は、会議や裁判や売買が行なわれる公共の場でありました。ですから、アブラハムはヘトの人々に、公にお願いしているのです。アブラハムは自分で言っておりますように、「ヘトの人々のところに一時滞在する寄留者」であります。寄留者には、土地を所有することが許されておりませんでした。しかし、アブラハムはそのことを知っておりながら、「あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです」と願うのです。これに対して、ヘトの人々は、アブラハムを「わたしどもの中で神に選ばれた方」と呼びながらも、アブラハムに墓地を譲ることはやんわりと断ります。「どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません」と言って、墓地を使用することは認めるのですが、墓地を譲ってほしいというアブラハムの願いは受け流すわけです。

 7節から18節までをお読みします。

 アブラハムは改めて国の民であるヘトの人々に挨拶をし、頼んだ。「もし、亡くなった妻を葬ることをお許しいただけるなら、ぜひ、わたしの願いを聞いてください。ツォハルの子、エフロンにお願いして、あの方の畑の端にあるマクペラの洞穴を譲っていただきたいのです。十分な銀をお支払いしますから、皆様方の間に墓地を所有させてください。」エフロンはそのとき、ヘトの人々の間に座っていた。ヘトの人エフロンは、町の門の広場に集まって来たすべてのヘトの人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところで、あなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください。」アブラハムは国の民の前で挨拶をし、国の民の聞いているところで、エフロンに頼んだ。「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます。」エフロンはアブラハムに答えた。「どうか、御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シェケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください。」アブラハムはこのエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々が聞いているところで言った値段、銀四百シェケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡した。こうして、マムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち会いのもとに、アブラハムの所有となった。

 ここには、古代オリエントの社会において、どのようにして売り買いがなされていたかが詳しく記されております。ヘトの人々は、「どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください」と答えることによって、アブラハムの「墓地を譲ってほしい」という願いをやんわりと断ったのですが、アブラハムは、改めてヘトの人々に挨拶し、亡くなった妻を葬ることの許しを得たことを足がかりとして、「ツォハルの子、エフロンの畑の端にあるマクペラの洞穴を譲っていただきたい」と願い出ます。十分な銀を支払うので、ヘトの人々の間に墓地を所有させてほしいと願うのです。マクペラの洞穴は、17節によりますと、「マムレの前」にありました。マムレは、かつてアブラハムが寄留していた場所であります。第13章に、「ロトとの別れ」が記されていますが、その18節に、「アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた」と記されています。また、第18章に、アブラハムが三人の旅人をもてなしたお話しが記されておりましたが、そのときも、アブラハムはマムレに寄留していたのです。マムレは、妻サラと生活を共にした、思い出の地であるわけです。ですから、アブラハムは、エフロンの畑の端にあるマクペラの洞穴を墓地として所有したいと願ったのです。

 そのとき、エフロンは、人々の間に座っておりました。そこで、町の広場に集まって来たすべての人々の前で、エフロンとアブラハムの交渉が始まるわけです。ヘブロンは、アブラハムに次のように答えました。「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。あそこにある洞穴も差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところであなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください」。ここでエフロンは、アブラハムに対して寛大に接していますけれども、私たちは文字通り、このエフロンの言葉を受け取ってはいけません。これは、当時の物の売買の交渉のやり方なのです。「差し上げます」と三回も繰り返すわけですが、もちろん、「ただで与える」ことなどエフロンは考えておりません。また、アブラハムも「ただでもらえる」などと考えておりません。アブラハムは、すでに9節で、「十分な銀を払う」と言っているのですから、それを前提として、エフロンは、「差し上げる」と言って、自分がどれほどアブラハムに好意的であり、寛大であるかを示しているのです。それにしても、エフロンという人は抜け目のない男であります。アブラハムが譲ってほしいと願ったのは、洞窟だけでありましたが、ここでは、洞窟だけではなく畑を差し上げますと言って、畑をもアブラハムに買い取らせようとするのです。アブラハムも、エフロンが洞窟だけではなく、畑と一緒に買い取ってほしいという意図を汲み取って、「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます」と答えました。ここまで言われて、ようやくエフロンは値段を提示することができるわけです。エフロンは、アブラハムにこう答えます。「どうか、御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シェケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください」。このエフロンの言葉を読むと、私たちは、400シェケルはたいした値段ではないと思います。しかし、そうではないのです。400シェケルは破格の高値なのです。エフロンは、畑の値段として、大変高い金額を提示したのです。しかし、それを、たいした額でないように語っているのです。アブラハムは、このエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々が聞いているところで言った値段、銀400シェケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡しました。このようにして、マムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含めて、町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち会いのもとに、アブラハムの所有となったのです。すべてのヘトの人々が、エフロンとアブラハムとの売買の、いわば生ける契約書となったのです。

 19節と20節をお読みします。

 その後アブラハムは、カナン地方のヘブロンにあるマムレの前のマクペラの畑の洞穴に妻のサラを葬った。その畑とそこの洞穴は、こうして、ヘトの人々からアブラハムが買い取り、墓地として所有することになった。

 エフロンとの交渉の末、アブラハムはカナン地方のヘブロンに墓地を所有し、サラを葬るのですが、どうして、アブラハムは墓地を所有することにこだわったのでしょうか?ヘトの人々が墓地の使用を許可したにも関わらず、アブラハムがカナンの地に墓地を所有することにこだわったのはなぜか?それは、カナンの地が、主が与えてくださる約束の地であったからです。主はアブラハムの子孫に、カナンの地を与えると約束されました。それゆえ、アブラハムはどうしてもカナン地に、一族の墓地を所有し、妻サラを葬ってやりたかったのです。アブラハムは「あなたの子孫にこの土地を与える」という主の約束を信じて、カナンの地に一族の墓地を所有し、妻サラを葬ったのであります。そして、やがて、この墓にアブラハム自身も葬られることになるのです(25:7~10参照)。

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