天使たちよりも優れた者 2018年1月14日(日曜 朝の礼拝)

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天使たちよりも優れた者

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
ヘブライ人への手紙 1章1節~14節

聖句のアイコン聖書の言葉

1:1 神は、かつて預言者たちによって、多くのかたちで、また多くのしかたで先祖に語られたが、
1:2 この終わりの時代には、御子によってわたしたちに語られました。神は、この御子を万物の相続者と定め、また、御子によって世界を創造されました。
1:3 御子は、神の栄光の反映であり、神の本質の完全な現れであって、万物を御自分の力ある言葉によって支えておられますが、人々の罪を清められた後、天の高い所におられる大いなる方の右の座にお着きになりました。
1:4 御子は、天使たちより優れた者となられました。天使たちの名より優れた名を受け継がれたからです。
1:5 いったい神は、かつて天使のだれに、/「あなたはわたしの子、/わたしは今日、あなたを産んだ」と言われ、更にまた、/「わたしは彼の父となり、/彼はわたしの子となる」と言われたでしょうか。
1:6 更にまた、神はその長子をこの世界に送るとき、/「神の天使たちは皆、彼を礼拝せよ」と言われました。
1:7 また、天使たちに関しては、/「神は、その天使たちを風とし、/御自分に仕える者たちを燃える炎とする」と言われ、
1:8 一方、御子に向かっては、こう言われました。「神よ、あなたの玉座は永遠に続き、/また、公正の笏が御国の笏である。
1:9 あなたは義を愛し、不法を憎んだ。それゆえ、神よ、あなたの神は、喜びの油を、/あなたの仲間に注ぐよりも多く、あなたに注いだ。」
1:10 また、こうも言われています。「主よ、あなたは初めに大地の基を据えた。もろもろの天は、あなたの手の業である。
1:11 これらのものは、やがて滅びる。だが、あなたはいつまでも生きている。すべてのものは、衣のように古び廃れる。
1:12 あなたが外套のように巻くと、/これらのものは、衣のように変わってしまう。しかし、あなたは変わることなく、/あなたの年は尽きることがない。」
1:13 神は、かつて天使のだれに向かって、/「わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまで、/わたしの右に座っていなさい」と言われたことがあるでしょうか。
1:14 天使たちは皆、奉仕する霊であって、救いを受け継ぐことになっている人々に仕えるために、遣わされたのではなかったですか。ヘブライ人への手紙 1章1節~14節

原稿のアイコンメッセージ

 前回、私たちは、かつて預言者たちによって、多くのかたちで、また多くの仕方で先祖に語られた神様が、この終わりの時代には、御子によって私たちに語られたことを学びました。神の栄光の反映であり、神の本質の完全な現れである御子によって、神様は、最終的に、究極的に、私たちに語られたのです。それは、私たちが旧約聖書の御言葉に聞き従わなくてよいということではありません。そうではなくて、旧約を御子イエス・キリストの教えに従って読まなくてはならないということであります。旧約をイエス・キリストを証しする書物として、また、イエス・キリストにおいて成就する書物として読まなくてはならないということです。そして、そのことを見事にしてくれているのが、ヘブライ人への手紙であるのです。

 ここまでは、前回お話したことの振り返りであります。今朝は、4節から14節より、御言葉の恵みにあずかりたいと願っております。

 4節をお読みします。

 御子は、天使たちより優れた者となられました。天使たちの名より優れた名を受け継がれたからです。

 御子が受け継がれた「天使たちよりも優れた名」とは、どのような名でしょうか?結論から申しますと、それは「御子」という名であります。御子は「御子」という名を受け継がれたのです。この4節と似たようなことを、パウロは、フィリピの信徒への手紙の2章6節から11節に、記しております。新約の363頁です。

 キリストは、神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者になられました。人間の姿で現れ、へりくだって、死に至るまで、それも十字架の死に至るまで従順でした。このため、神はキリストを高く上げ、あらゆる名にまさる名をお与えになりました。こうして、天上のもの、地上のもの、地下のものがすべて、イエスの御名にひざまずき、すべての舌が、「イエス・キリストは主である」と公に宣べて、父である神をたたえるのです。

 ここでの「あらゆる名にまさる名」とは、「主」という名であります。神の身分である方、すなわち、主に、主という名が与えられたのです。なぜ、このようなことを改めて記さねばならないのでしょうか?それは、神の身分である方が人間と同じ者になられ、十字架の死を死なれたからです。主であるイエス・キリストが、人間と同じ者になられ、十字架の死を死なれた。それゆえ、父なる神は、イエス・キリストを復活させ、御自分の右の座に上げられ、主という名を与えられたのです。ヘブライ人への手紙が「御子は御子という名前を受け継いだ」と記すのも同じ理由であります。人となられた御子は、人々の罪を清められた後、天の高い所におられる大いなる方の右の座にお着きになり、御子という名を受け継がれたのです(ローマ1:3,4参照)。

 では、今朝の御言葉に戻ります。新約の401頁です。

 「御子は、天使たちよりも優れた者となられました。御子は、天使たちよりも優れた名を受け継がれたからです」と記す、その「御子」は、世界を造られた御方でありながら、人として生まれ、十字架に死んで、復活し、父なる神の右にあげられた御子イエス・キリストのことであります。当時の常識として、天使は、人間よりも神様に近い存在と考えられておりました。詩編103編の20節、21節に、こう記されています。「御使いたちよ、主をたたえよ/主の語られる声を聞き/御言葉を成し遂げるものよ/力ある勇士たちよ。主の万軍よ、主をたたえよ/御もとに仕え、御旨を果たす者よ」。天使たちは、天で神様に仕え、御旨を果たす霊的な存在であるのです。天使たちも、神様によって造られた被造物であります。しかし、私たちとは違い肉体はもっていなかったようです。旧約聖書に出て来る天使たちが食事をしないのはそのことを示しています。聖書は、天使について、それほど詳しく記しておりません。それは、聖書の関心が人間の救いにあるからです。ただ、一つ言えることは、神様が人間に先立って、天使たちを造られたということです。なぜなら、エデンの園において、堕落した天使である悪魔が、アダムの助け手である女を誘惑したからです。ともかく、当時の人々は、天使たちの方が、人間よりも神様に近い、神様の御心を行うという点からすれば、人間よりも天使の方が優れていると考えたのです。そして、このことは、ウェストミンスター小教理問答が教えていることでもあります。ウェストミンスター小教理問答は、問102で、次のように告白しています。「(『みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ』という)第三の祈願で私たちが祈る事は、神が恵みによって私たちにも、天における御使いたちのように、万事につけて神の御意志を知り・従い・服することができる力と意志とを、授けてくださるように、ということです」。私たちも、「主の祈り」で、「みこころが天で行われるように、地上でも行われますように」と祈っております。私たちは、「神様が恵みによって、天における御使いたちのように、神様の御意志を知り、従うことができるように」と祈っているのです。ですから、私たちも、人間よりも天使の方が、御心を知り、従うことにおいては優れていることを認めているのです。

 では、御子はどうでしょうか?御子も人間となられました。それでは、人間となられた御子イエス・キリストは天使たちよりも劣っているのでしょうか?そうではありません。なぜなら、神はイエス・キリストを高く上げられ、御自分の右の座に着かせて、天使に優る名、御子という名を受け継がせられたからです。十字架の死から三日目に復活され、今も父なる神の右に座しておられるイエス・キリストは天使たちよりも優れた御子であられるのです。ヘブライ人への手紙の著者である説教者は、そのことを聖書を引用しつつ、論証するのです。

 5節、6節をお読みします。

 いったい神は、かつての天使のだれに、「あなたはわたしの子、わたしは今日、あなたを産んだ」と言われ、更にまた、「わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる」と言われたでしょうか。更に、また、神はその長子をこの世界に送るとき、「神の天使たちは皆、彼を礼拝せよ」と言われました。

 「あなたはわたしの子、わたしは今日、あなたを産んだ」。これは、詩編の2編7節からの引用であります。詩編第2編は、王の即位の詩であり、メシア預言として読まれておりました。また、「わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる」は、サムエル記下7章14節からの引用であります。この御言葉は、ダビデ契約の一節であり、これもメシア預言として読まれておりました。そして、キリスト教会は、どちらのメシア預言も、イエス・キリストにおいて実現したと理解していたのです。御子イエス・キリストは、神様から「わたしの子」と呼ばれる、神様から産まれた長子であるのです。それに対して、天使たちは造られた者であり、御子を礼拝する者たちであるのです。「神の天使たちは皆、彼を礼拝せよ」。これは申命記32章43節からの引用であります。それも、ヘブライ語旧約聖書のギリシャ語訳である七十人訳聖書からの引用であります。私たちが持っている新共同訳聖書は、ヘブライ語旧約聖書を日本語に翻訳したものですから、訳が違います。申命記の32章43節の七十人訳聖書には、「神の天使たちは皆、彼をを礼拝せよ」と記されているのです。ここで注目したいことは、申命記が「彼を礼拝せよ」と記すとき、その「彼」とは「神様」のことです。しかし、ヘブライ人への手紙は、その「彼」を「御子イエス・キリスト」を指すと解釈しているのです。それは、御子が「神の栄光の反映であり、神の本質の完全な現れである」神、その方であるからです。

 7節から12節までをお読みします。

 また、天使たちに関しては、「神は、その天使たちを風とし、御自分に仕える者たちを燃える炎とする」と言われ、一方、御子に向かっては、こう言われました。「あなたの玉座は永遠に続き、また、公正の笏が御国の笏である。あなたは義を愛し、不法を憎んだ。それゆえ、神よ、あなたの神は、喜びの油を、あなたの仲間に注ぐよりも多く、あなたに注いだ。」また、こうも言われています。「主よ、あなたは初めに大地の基を据えた。もろもろの天は、あなたの手の業である。これらのものは、やがて滅びる。だが、あなたはいつまでも生きている。すべてのものは、衣のように古び廃れる。あなたが外套のように巻くと、これらのものは、衣のように変わってしまう。しかし、あなたは変わることなく、あなたの年は尽きることがない。」

 7節の「神は、その天使たちを風とし、御自分に仕える者たちを燃える炎とする」は、詩編の104編4節からの引用であります。これも、ギリシャ語訳旧約聖書からの引用ですので、新共同訳聖書の翻訳と少し違います。ここで説教者が言いたいことは、御使いは、変わる者であり、つかの間の者であり、仕える者であるということであります。それに対して、御子は、変わることのない御方、永遠の御方、万物の支配者であられるのです。8節、9節は、詩編の45編7節、8節からの引用であります。ここで注目したいことは、王が「神よ」と呼びかけられている点です。これは明らかに誇張法でありますが、説教者は文字通りに理解して、御子イエス・キリストに当てはめました。神から喜びの油を注がれた神こそ、御子イエス・キリストであるのです。使徒言行録2章に記されているペンテコステのペトロの説教によれば、弟子たちに聖霊が降ったのは、父なる神の右の座に着かれたイエス・キリストを通してでありました(使徒2:33「それで、イエスは神の右に上げられ、約束された聖霊を御父から受けて注いでくださいました」参照)。父なる神は御子イエス・キリストに聖霊を豊かに注いでくださいました。それは、その仲間である弟子たちに降るほどに豊かであったのです。

 10節から12節は、詩編の102編26節から28節までの引用であります。ここでも「主よ」という言葉が、御子イエス・キリストにそのまま当てはめられています。つまり、説教者は、「イエス・キリストは主である」という信仰を前提にして、この所を引用しているのです。このようなことは、私たちもしていることであります。詩編23編に、「主はわたしの羊飼い」とありますけれども、私たちは、その「主」に、わたしのために命を捨ててくださった良い羊飼い、主イエスを重ねて読むわけです。主なる神と主イエス・キリストを同一視して読むわけであります。

 13節、14節をお読みします。

 神は、かつての天使のだれに向かって、「わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまで、わたしの右に座っていなさい」と言われたことがあるでしょうか。天使たちは皆、奉仕する霊であって、救いを受け継ぐことになっている人々に仕えるために、遣わされたのではなかったですか。

 13節は、詩編の110編1節からの引用であります。この御言葉も、メシア預言として読まれておりました。ここには記されておりませんが、この御言葉の前には、「主はわたしの主にお告げになった」と記されています。そして、七十人訳聖書では、どちらの主も同じ「キュリオス」という言葉であるのです。説教者は、この箇所も、「イエス・キリストは主である」という信仰を前提に引用しているのです。御子は、統治者であり、勝利者であられます。それに対して、天使たちは奉仕する霊であるのです。天使たちは御子に仕えるだけではなく、御子を信じて救いを受け継ぐ人々に仕える霊であるのです。このことは、私たちが、天使より優れた者であるということではありません。ただ、御子とのつながりのゆえに、天使たちは、私たちに仕える者とされているのです(マタイ18:10「これらの小さな者を一人でも軽んじないように気をつけなさい。言っておくが、彼らの天使たちはいつでもわたしの天の父の御顔を仰いでいるのである」参照)。それゆえ、私たちは、天使たちを礼拝してはなりません。私たちが礼拝すべき御方は、御子イエス・キリストであるのです。

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