口寄せの女を訪れるサウル 2021年12月15日(水曜 聖書と祈りの会)

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口寄せの女を訪れるサウル

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記上 28章3節~25節

聖句のアイコン聖書の言葉

28:3 サムエルが死んだ。全イスラエルは彼を悼み、彼の町ラマに葬った。サウルは、既に国内から口寄せや魔術師を追放していた。
28:4 ペリシテ人は集結し、シュネムに来て陣を敷いた。サウルはイスラエルの全軍を集めてギルボアに陣を敷いた。
28:5 サウルはペリシテの陣営を見て恐れ、その心はひどくおののいた。
28:6 サウルは主に託宣を求めたが、主は夢によっても、ウリムによっても、預言者によってもお答えにならなかった。
28:7 サウルは家臣に命令した。「口寄せのできる女を探してくれ。その女のところに行って尋ねよう。」家臣は答えた。「エン・ドルに口寄せのできる女がいます。」
28:8 サウルは変装し、衣を替え、夜、二人の兵を連れて女のもとに現れた。サウルは頼んだ。「口寄せの術で占ってほしい。あなたに告げる人を呼び起こしてくれ。」女は言った。
28:9 「サウルのしたことをご存じでしょう。サウルは口寄せと魔術師をこの地から断ちました。なぜ、わたしの命を罠にかけ、わたしを殺そうとするのですか。」
28:10 サウルは主にかけて女に誓った。「主は生きておられる。この事であなたが咎を負うことは決してない。」
28:11 女は尋ねた。「誰を呼び起こしましょうか。」「サムエルを呼び起こしてもらいたい」と彼は頼んだ。
28:12 その女は、サムエルを見ると、大声で叫び、サウルに言った。「なぜわたしを欺いたのですか。あなたはサウルさまではありませんか。」
28:13 王は言った。「恐れることはない。それより、何を見たのだ。」女はサウルに言った。「神のような者が地から上って来るのが見えます。」
28:14 サウルはその女に言った。「どんな姿だ。」女は言った。「老人が上って来ます。上着をまとっています。」サウルにはそれがサムエルだと分かったので、顔を地に伏せ、礼をした。
28:15 サムエルはサウルに言った。「なぜわたしを呼び起こし、わたしを煩わすのか。」サウルは言った。「困り果てているのです。ペリシテ人が戦いを仕掛けているのに、神はわたしを離れ去り、もはや預言者によっても、夢によってもお答えになりません。あなたをお呼びしたのは、なすべき事を教えていただくためです。」
28:16 サムエルは言った。「なぜわたしに尋ねるのか。主があなたを離れ去り、敵となられたのだ。
28:17 主は、わたしを通して告げられた事を実行される。あなたの手から王国を引き裂き、あなたの隣人、ダビデにお与えになる。
28:18 あなたは主の声を聞かず、アマレク人に対する主の憤りの業を遂行しなかったので、主はこの日、あなたに対してこのようにされるのだ。
28:19 主はあなたのみならず、イスラエルをもペリシテ人の手に渡される。明日、あなたとあなたの子らはわたしと共にいる。主はイスラエルの軍隊を、ペリシテ人の手に渡される。」
28:20 サウルはたちまち地面に倒れ伏してしまった。サムエルの言葉におびえたからである。また彼はこの日、何も食べていなかったため、力が尽きていたのである。
28:21 その女はサウルに近づき、サウルがおびえきっているのを見て、言った。「はしためはあなたの声に聞き従いました。命をかけて、あなたが言った言葉に聞き従ったのです。
28:22 今度は、あなたがはしための声に聞き従ってください。ささやかな食事をあなたに差し上げますから、それを召し上がり、力をつけてお帰りください。」
28:23 サウルは拒み、食べたくないと言った。しかし、家臣もその女も強く勧めたので、彼らの勧めに従い、地面から起き上がって、床の上に座った。
28:24 女の家には肥えた子牛がいたので急いで屠り、小麦粉を取ってこね、種なしパンを焼いた。
28:25 女が、サウルと家臣にそれを差し出すと、彼らは食べて、その夜のうちに立ち去った。サムエル記上 28章3節~25節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『サムエル記上』の第28章3節から25節より、「口寄せの女を訪れるサウル」という題でお話しします。

 3節に、サムエルが死んだことが記されています。サムエルが死んだことは、第25章1節に、既に記されていました。全イスラエルはサムエルの死を悲しみ、ラマに葬りました。また、サウルは、既に国内から口寄せや魔術師を追放していました。これは、モーセの律法に従ってのことであります。『申命記』の第18章9節と10節に次のように記されています。「あなたが、あなたの神、主の与えられる土地に入ったならば、その国々のいとうべき習慣を見習ってはならない。あなたの間に、自分の息子、娘に火の中を通らせる者、占い師、卜者、易者、呪術師、呪文を唱える者、口寄せ、霊媒、死者に伺いを立てる者などがいてはならない」。サウルは、この『申命記』の御言葉に従って、国内から口寄せや魔術師を追放していたのです。

 4節に、ペリシテ人は集結し、シュネムに来て陣を敷いたこと。他方、サウルはイスラエルの全軍を集めてギルボアに陣を敷いたことが記されています(「地図17 ギルボアの戦い」を参照)。このことは、第31章に記されている「ギルボア山での戦い」の直前のことであると考えられています。今朝の「サウル、口寄せの女を訪れる」というお話しは、時間の順序から言うと、第31章の「ギルボア山での戦い」の前日の出来事であるのです。といいますのも、第29章1節を見ると、「ペリシテ人は、その軍勢をすべてアフェクに集結させた」と記されているからです。また、第29章11節後半には、「ペリシテ軍はイズレエルに向かった」と記されています。さらに、第28章19節で、サムエルはこう言っています。「主はあなたのみならず、イスラエルをもペリシテ人の手に渡される。明日、あなたとあなたの子らはわたしと共にいる。主はイスラエルの軍隊を、ペリシテ人の手に渡される」。ここで、サムエルは、「明日、あなたとあなたの子らはわたしと共にいる」と言っています。この明日を文字通りにとるならば、サウルが口寄せの女を訪れたのは、決戦前夜であったのです。

 サウルは、ペリシテの陣営を見て恐れ、その心はひどくおののきました。サウルは主に託宣を求めましたが、主は、夢によっても、ウリムによっても、預言者によってもお答えになりませんでした。ウリムとは、祭司が身に着けている「くじ」のようなものです。夢、ウリム、預言者は、主が御心を示される合法的な手段でありました。しかし、主は、その合法的な手段である夢、ウリム、預言者を通して、サウルに何もお語りにならないのです。それで、サウルは、非合法な手段を用います。律法で禁じられている口寄せによって、神様の御心を知ろうとするのです(レビ19:31参照)。サウルは家臣にこう命じます。「口寄せのできる女を探してくれ。その女のところに行って尋ねよう」。すると家臣はこう答えました。「エン・ドルに口寄せのできる女がいます」。それでサウルは変装し、衣を替え、夜、二人の兵士を連れて女のもとに行きました。サウルは、「口寄せの術で占ってほしい。あなたに告げる人を呼び起こしてくれ」と頼みます。すると、女はこう答えました。「サウルのしたことをご存じでしょう。サウルは口寄せと魔術師をこの地から断ちました。なぜ、わたしの命を罠にかけ、わたしを殺そうとするのですか」。女は、目の前にいる男がサウルであると知らないわけです。すると、サウルは主にかけて誓ってこう言いました。「主は生きておられる。この事であなたが咎を負うことは決してない」。ここでもサウルは、主の御名をみだりに唱えています。『レビ記』には、「男であれ、女であれ、口寄せや霊媒は必ず死刑に処せられる」と記されているにもかかわらず、サウルは、主の御名によって、「この事であなたが咎を負うことは決してない」と誓うのです(レビ20:27)。サウルは、自分に都合よく、主の御名を口にするのです。女が「誰を呼び起こしましょうか」と尋ねると、サウルは、「サムエルを呼び起こしてもらいたい」と頼みました。女は、サムエルを見ると、大声で叫び、サウルにこういいます。「なぜわたしを欺いたのですか。あなたはサウルさまではありませんか」。どうして、女が、サムエルを見て、目の前の男がサウルであると知ったのかは、よく分かりません。一つ考えられることは、このとき、女に主の力が働いたということです。『民数記』の第22章から第24章に、占い師バラムの口を通して、主がイスラエルを祝福したお話しが記されています(ヨシュア13:22参照)。主は、口寄せや霊媒をいとわれますが、ここでは例外としてそれを用いて、サウルに御旨を示されるのです。

 女から「老人が上ってきます。上着をまとっています」と聞くと、サウルは、それがサムエルだと分かりました。上着はサムエルのトレードマーク(特徴的なしるし)であったのです(15:27参照)。サウルは顔を地に伏せ、礼をしました。15節以下に、呼び出されたサムエルの霊とサウルとの会話が記されています。これがどのような仕方でなされたのかは分かりません。サムエルの霊が女にのりうつって、女の口を通して語ったのかなぁと想像しますが、聖書は、霊媒がどのように行われたかを記していません。霊媒は主によって禁じられている行為ですから、あえて記していないのだと思います。サムエルはサウルにこう言いました。「なぜ、わたしを呼び起こし、わたしを煩わすのか」。それに対してサウルはこう言います。「困り果てているのです。ペリシテ人が戦いを仕掛けているのに、神はわたしを離れ去り、もはや預言者によっても、夢によってもお答えになりません。あなたをお呼びしたのは、なすべき事を教えていただくためです」。サウルは、かつて自分に油を注ぎ、イスラエルの王としたサムエルに、どうすればペリシテ人に勝つことができるかを教えてほしかったのです。しかし、サムエルはこう言います。「なぜわたしに尋ねるのか。主があなたを離れ去り、敵となられたのだ。主は、わたしを通して告げられた事を実行される。あなたの手から王国を引き裂き、あなたの隣人、ダビデにお与えになる。あなたは主の声を聞かず、アマレク人に対する主の憤りの業を遂行しなかったので、主はこの日、あなたに対してこのようにされるのだ。主はあなたのみならず、イスラエルをもペリシテ人の手に渡される。明日、あなたとあなたの子らはわたしと共にいる。主はイスラエルの軍隊を、ペリシテ人の手に渡される」。

 ここで、サムエルは、主がサウルを離れ去っただけではなく、サウルの敵となられたと告げます。サウルは、ダビデを敵視することにより、さらには主の祭司の町ノブを滅ぼし尽くすことによって、自らを主の敵としたのです(19:17、22:29参照)。主がサウルから王国を取り上げられることは、第15章に記されていました。かつて、サムエルは、サウルにこう言っていました。「今日、主はイスラエルの王国をあなたから取り上げ、あなたよりすぐれた隣人にお与えになる。イスラエルの栄光である神は、偽ったり気が変わったりすることのない方だ。この方は人間のように気が変わることはない」(15:28、29)。今朝の御言葉、第28章で告げていることも、これとほぼ同じことです。ただ、ここでは、その隣人が「ダビデ」であると明言されています。さらに、サムエルは、イスラエルがペリシテ人の手に渡されること。サウルとその子供たちが、明日、自分と共にいると告げるのです。サウルは、サムエルから、イスラエルがペリシテ人に負けること、自分と子供たちが戦死することを聞くのです。それで、サウルはたちまち地面に倒れてしまいました。サウルは、サムエルの言葉におびえて、また、この日何も食べていなかったので、力つきて倒れてしまったのです。なぜ、サウルは、この日何も食べていなかったのでしょうか。心配で食事も喉を通らなかったのでしょうか。そうかも知れませんが、おそらく、サウルは、主の託宣を得ようと断食していたのだと思います(14:24参照)。

 口寄せの女は、サウルに近づき、サウルがおびえきっているのを見て、こう言いました。「はしためはあなたの声に聞き従いました。命をかけて、あなたが言った言葉に聞き従ったのです。今度は、あなたがはしための声に聞き従ってください。ささやかな食事をあなたに差し上げますから、それを召し上がり、力をつけてお帰りください」。サウルは拒み、食べたくないと言いましたが、家臣も女も強く勧めたので、サウルは地面から起き上がり、床の上に座りました。女は肥えた子牛を屠り、小麦粉を取ってこね、種なしパンを焼きました。これは王様にふさわしい御馳走でありますね。そして、これがサウルにとっての最後の晩餐となったのです。サウルと家臣はそれを食べて、その夜のうちに立ち去りました。サウルはイスラエルの王として、ペリシテ人と戦うために、ギブアへと戻って行ったのです。

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