Q.20
- 問い
- 神は全人類を、罪と悲惨の状態のうちに滅びるままにされましたか。
- 答え
- 神は、全くの御好意によって、永遠の昔から、ある人々を永遠の命に選んでおられたので、彼らと恵みの契約を結ばれました。それは、ひとりのあがない主によって、彼らを罪と悲惨の状態から救助して、救いの状態に入れるためです。
天地創造の前に、キリストにあって私たちをお選びになりました。私たちが愛の内に御前で聖なる、傷のない者となるためです。御心の良しとされるままに、私たちをイエス・キリストによってご自分の子にしようと、前もってお定めになったのです。エフェソの信徒への手紙 1章4節~5節
問20 神は全人類を、罪と悲惨の状態のうちに滅びるままにしておかれましたか。
答 神は、ただご自身のよしとされるところにより、全(まった)くの永遠から、ある人々を永遠の命に選んでおられたので(1)、ひとりの贖い主(ぬし)によって、彼らを罪と悲惨の状態から解放して救いの状態に入(い)れるために、恵みの契約に入(はい)られました(2)。
Q.20. Did God leave all mankind to perish in the estate of sin and misery?
A.God having, out of his mere good pleasure, from all eternity, elected some to everlasting life, did enter into a covenant of grace, to deliver them out of the estate of sin and misery, and to bring them into an estate of salvation by a Redeemer.
(1)エフェソ1:4 天地創造の前に、キリストにあって私たちをお選びになりました。私たちが愛の内に御前で聖なる、傷のない者となるためです。
(2)ローマ3:20-22 なぜなら、律法を行うことによっては、誰一人神の前で義とされないからです。律法によっては、罪の自覚しか生じないのです。しかし今や、律法を離れて、しかも律法と預言者によって証しされて、神の義が現されました。神の義は、イエス・キリストの真実によって、信じる者すべてに現されたのです。そこには何の差別もありません。
ガラテヤ3:21-22 それでは、律法は神の約束に反するのでしょうか。決してそうではない。もしも与えられた律法が人を生かすことのできるものであったなら、実際に律法によって義が実現したことでしょう。しかし、聖書はすべてのものを罪の下に閉じ込めました。約束がイエス・キリストの真実によって、信じる人々に与えられるためです。
【解説】
①アダムの最初の違反において全人類は堕落し、罪と悲惨の状態に至りました(問16、17参照)。では、神様は、全人類を罪と悲惨の状態のうちに滅びるままにしておかれたのでしょうか。小教理は、問20でこう告白しています。「神は、ただご自身のよしとされるところにより、全くの永遠から、ある人々を永遠の命に選んでおられたので、ひとりの贖い主によって、彼らを罪と悲惨の状態から解放して救いの状態に入(い)れるために、恵みの契約に入(はい)られました」。
②全人類はアダムにあって罪を犯し、また自らも罪を犯し続けているのですから、神様が全人類を罪と悲惨の状態のままにしておかれても誰も文句は言えません。しかし、神様は御自身のよしとされるところ(good pleasure)により、全くの永遠から(天地創造の前から)、ある人々を永遠の命に選んでおられたので、ひとりの贖い主イエス・キリストによって、彼らを罪と悲惨の状態から解放して、救いの状態に入れるために、恵みの契約関係に入られたのです。
③「恵みの契約」がどのような契約であるかは、神様がアダムにとられた特別の摂理の行為である「命の契約(行いの契約)」と比べるとよく分かります。命の契約(行いの契約)は、完全な服従という行いによって、命を得る契約でした。しかし、恵みの契約は、イエス・キリストを信じるだけで命が与えられるという契約であるのです。しかも、イエス・キリストを信じる信仰さえも、聖霊なる神様が与えてくださるのです。まさに、私たちは神様の一方的な恵みによって救われるのです。
④ここで注意したいことは、私たちにとっては恵みの契約であっても、イエス・キリストにとっては行いの契約であったということです。最後のアダムであるイエス・キリストは、私たちに代わって神の掟を完全に守られました。また、イエス・キリストは私たちに代わって罪の刑罰としての十字架の死を死んでくださいました。それゆえ、私たちはイエス・キリストを信じるだけで、罪と悲惨の状態から解放されて救いの状態に入れられるのです。
【参考】
①ウェストミンスター大教理問答
問30 神は全人類を、罪と悲惨の状態のうちに滅びるままにしておかれますか。
答 神は、すべての人が、通常、行いの契約と呼ばれている第一の契約を破ることによって陥った罪(1)と悲惨の状態のうちに滅びるままにはされません(2)。神は、ただ御自身の愛と憐れみにより、御自身の選びの民をその状態から解放し、通常、恵みの契約と呼ばれる第二の契約によって、彼らを救いの状態に入れられます(3)。
(1)ガラ3:10、(2)Ⅰテサ5:9、(3)テト3:4−7、ガラ3:21、ロマ3:20−22
問31 恵みの契約は誰と結ばれましたか。
答 恵みの契約は、第二のアダムであるキリストと、また、キリストにあって、かれの子孫であるすべての選びの民と結ばれました(1)。
(1)ガラ3:16、ロマ5:15−21、イザ53:10、11
問32 神の恵みは、第二の契約においてどのように明らかにされていますか。
答 神の恵みは、第二の契約において次のように明らかにされています。すなわち、神は罪人に、仲介者と(1)、その方による命と救い(2)を無償で備え、提供しておられます。また神は、罪人を仲介者にあずからせる条件として信仰を求めつつ(3)、御自身のすべての選びの民にかれの聖霊を約束し、与えられます(4)。聖霊は彼らの内に、その信仰を起こし(5)、すべての他の救いの恵みの賜物をもたらし(6)、彼らが、全き聖い服従ができるようにさせられます(7)。この服従は、神に対する彼らの信仰(8)と感謝(9)が真実であることの証拠であり、また、神が彼らに定められた救いに至る道でもあります(10)。
(1)創3:15、イザ42:6、ヨハ6:27、(2)Ⅰヨハ5:11、12、(3)ヨハ3:16、ヨハ1:12、(4)箴1:23、(5)Ⅱコリ4:13、(6)ガラ5:22、23、(7)エゼ36:27、(8)ヤコ2:18、22、(9)Ⅱコリ5:14、15、(10)エフェ2:10
②ウェストミンスター信仰告白 第7章「人間に対する神の契約について」
[3]人間はその堕落によって、自らをこの契約によって命を得ることができないようにしてしまったので、主は、通常、恵みの契約と呼ばれている第二の契約を結ぶことをよしとされた(1)。そこでは、主は罪人に、命と救いをイエス・キリストによって無償で提供しておられる。そして、彼らからは救われるためにイエス・キリストへの信仰を要求し(2)、永遠の命に定められているすべての者たちには、進んで信じるように、また信じることができるようにするために、かれの聖霊を与えることを約束しておられる(3)。
(1)ガラテヤ3:21、ローマ8:3、ローマ3:20、21、創世3:15、イザヤ42:6、(2)マルコ16:15、16、ヨハネ3:16、ローマ10:6、9、ガラテヤ3:11、(3)エゼキエル36:26、27、ヨハネ6:44、45