2025年07月27日「「神の言葉は現に働いている」」

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「このようなわけで、わたしたちは絶えず神に感謝しています。なぜなら、わたしたちから神の言葉を聞いたとき、あなたがたは、それを人の言葉としてではなく、神の言葉として受け入れたからです。事実、それは神の言葉であり、また、信じているあなたがたの中に現に働いているものです」(13節)。日本聖書協会『聖書 新共同訳』
テサロニケの信徒への手紙一 2章13節~16節

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 「神の言葉は現に働いている」 テサロニケの信徒への手紙一 2章13節~16節                  2025.7.27

 神の言葉は現に働いている。もしこれが真実でないとしたら、今私がこのように聖書のある箇所から話をしても、それは人を真に生かす言葉とはならないでしょうし、教会を築くこともないでしょう。そして皆さんも、聖書についての説明を聞くだけに終わり、昔、紀元1世紀にパウロという人がテサロニケの教会宛にこんな手紙を書きました、という昔の物語で終わりです。しかし教会の礼拝で語られる神の言葉の説き明かしは、そこで神が語っておられるのであり、神の言葉として働いているのである。キリスト教会はそれを信じて、それに基づいて代々の教会で神の御言葉を語ってきたのでした。

1.神の言葉として受け入れた
 使徒パウロは、語られる神の言葉について語っています。神の言葉は、この紀元1世紀ではユダヤ人の中に、旧約聖書として書かれたものとして存在していました。もっとも、旧約聖書という表現は、キリスト教会だけの言い方でして、ユダヤ教においては、創世記からマラキ書までが聖書です。それは今もそうです。ただユダヤ人の言葉であるヘブライ語の聖書は、創世記から始まって歴代誌で終わっており、配列が違いますが、実はキリスト教会もそのヘブライ語の聖書を神の言葉として信じています。
 しかし主イエス・キリストを来たるべきメシア=キリストと信じる私たちキリスト教会は、イエスの昇天後、数十年の後にまとめられた新約聖書を神の権威ある言葉として受け入れており、それに対して創世記からマラキ書までを旧約聖書として位置付け、同じ権威ある神の言葉として受け入れているのです。それが記された神の言葉です。
 けれども教会は、書かれた神の言葉を、書物として保管して、置いておいただけではなかったのでした。書かれた神の言葉は、書物としてそこに存在していますが、それは読まれ、信じられ、語られるべきものとして与えられています。神の言葉は、書物として図書館の保管庫に置かれているだけでは、意味をなしません。例えば、人がだれかに神のことを語るとして、聖書にこう書いてある、と言ったとします。特に解説などしなくても、人が聖書を読み信じた結果、聖書にこう書いてある、と他の人に言うとしたらそれこそ、神の言葉が書かれた目的に沿うものであり、そういう用いられ方をするものとして神の言葉は与えられており、書物として書かれて保存されているのも、そのためであります。
 ただし、個人個人が読んで学んで、不十分な理解で勝手に解釈をしてしまうと、理解がてんでばらばらになってしまう可能性があります(ペトロの手紙二 1章20節)。そもそも、新約聖書に書かれた内容は、大雑把に言えば、まず旧約聖書に書かれている内容を、救い主イエス・キリストを信じたキリスト教会が主イエスを証しするものとして旧約聖書を信じ、解釈してきた使徒たちの説教の内容が書かれています。また、使徒たちが、信仰と生活の規準として聖書をどのように解釈しクリスチャンとしてどう生きるべきかを教えた内容をまとめたものです。そしてもちろん、救い主イエスがなさった御業と語られた御言葉を書き記したものです。そのように書かれた聖書に基づいて、使徒たちやほかの著者たちが示してくれており、それに沿って後の時代の人々も聖書を理解してきたのでした。
 だから個々人が勝手に理解した内容ではなく、教会として理解した内容を、キリスト教会は受け継ぎ教会で説教によって語り続けてきたのです。それは、神から今この時に、その教会で語られている神の言葉として受け止めるべきものなのです。勿論、語るのは人間の牧師であり、罪人です。その人が教会の礼拝で説教する言葉は、神が語る言葉そのものであって、神がその口を借りて語っている、というような機械的なものではありません。勿論人間として語っているのですが、教会において、定められた教師たちが語る言葉は、福音の真理に立つ教会が、生ける神の言葉として信仰と生活の基準としての神の御言葉を説き明かす者を立てて任職し、そしてその者が教会で語るのです。だから、誰でもが講壇に立って語ればそれが神の言葉だというのではなく、教会において公に認められたものとして聖書の説き明かしがなされる時、そこでは神の言葉が語られているのです。

2.神の諸教会にならうものとなる
 それは、14節で言われているように、キリスト・イエスに結ばれている神の諸教会にならう、ということと深い関係があります。今日の私たちもまた、キリストに結ばれている世界中の神の教会に結ばれているものです。ここでは、迫害を受けていることが、神の諸教会と同じようにキリストに結ばれていることを証ししているという意味で言われていますが、今日の私たちもまた、この世で様々な困難に直面したり労苦をしたりすることは、キリストに結ばれた神の教会の一つであることの証しです。神の教会として、キリストを証しし、聖書の言葉に基づいて神の言葉を特に説教において語り続けて来た教会だからこそ、迫害も受け、困難に直面しながらもずっと歴史の中で教会として立ち続けてきたのです。
 ここで著者のパウロは自分たちもテサロニケの教会も、ユダヤ人たちから迫害されてきたと言っていますが、彼らが妨げていたのは、異邦人つまりユダヤ人以外の人々がキリストへの信仰によって救われることでした(16節)。パウロはユダヤ人たちがキリストによる救いを受け入れなかったその罪を非常に強く糾弾していますが、ここで私たちが心に留めたいのは、今の私たちは、一つの民族としてのユダヤの人々に対して神の怒りが向いていることはここから知らされているのですが、私たちは今、そういう迫害を受けているわけではありません。むしろ現代では、異邦人が救われるように福音を告げ知らせることを妨げるものに取り囲まれているという面に目を向けた方が良いのではないかと言えます。紀元1世紀にはなかったような様々なものが私たちを取りまいています。それは誰かからの迫害、というものとは全く異なる角度から、人々が福音を受け入れるのを妨げているのではないでしょうか。今の私たちは、そういう意味で過去の教会が経験してこなかったことに新たに直面していると言えます。そこは現代の教会に課せられた課題であり重荷だと言えます。

3.神の言葉は現に働いている
 最後に、神の御言葉は現に働いている、というこの一点に教会は立っていることを覚えます。神の言葉が現に働いていなければそれは人を生かす言葉とはなりえない、と言いました。人を生かすというのは、ここでは神に対して犯された罪の赦しを告げ知らせ、その通り主イエスによって赦し、救いとをもたらすということです。ただ単に生きる元気とか漠然とした希望を与えるという程度のものではありません。そして、神の言葉はこの世に教会を立てます。そこで神の御言葉が語られ、キリストを信じる信仰によって救われる人が起こされ、信者たちが集まって礼拝が行われるようになります。それもまた神の言葉が生きて働いているからです。しかし大事なことは、「信じているあなたがたの中に現に」働いているという点です。信仰者たちの中でこそ、神の言葉は働かれます。あなたがたの中、という場合、二つの面があります。一つは信じている者一人一人の中に、です。確かにそれがあって、一人一人が主に結びつけられ、主イエス・キリストにつながるからこそ、新しい命に生き始めるようになります。しかしそれだけではなく、信じて主イエスにつながった者が、ある所ある地域で一つに集まって群れとなり、共に礼拝をするようになると、その群れの中にも神の言葉は現に働いているのです。どちらが先というものでもなく、全体と部分とは結びついて共に働きます。
 神の言葉が働いているのを、私たちは目で見ることができるでしょうか。確かに、今この礼拝の中で皆さんが一つ所に集まって神の言葉を聞いていること、そしてそこから教えられて信者として自覚的に生きていること、それは実に神の言葉が現に働いていることの目に見える証拠であり、力強いしるしです。一人の人が主イエスを信じて悔い改めと信仰に導かれたならば、それこそ神の言葉の働きの結果です。神の言葉を聞いた人が信じるようになるのは聖霊の恵みであって聖霊が神の言葉を聞かせ、信仰に導いてくださいます。聖霊が、語られた御言葉と共に働いてくださって、救い主を知り、神の御子キリストが本当に人となって私たちのために御自身を献げてくださったことがわかったのだとしたら、その人は神の言葉の働きに与っているのです。神の言葉には力があります。この世のものがどれほど反対し、神とキリストを否定し、信仰者を神から引き離そうとしても、神の言葉の方が強いと知りましょう。
 そして神の言葉にさらに力強く、有効に働いていただくために、私たちは恵みの手段である御言葉、礼典、祈りをよく用いる必要があります。そして一人の信者の中で働くだけではなく、その群れの中で、教会で働く力を信じましょう。教会がそこに立ち続け、救いの言葉を語り続ける力と恵みに、私たちはあずかっているのです。

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