2020年12月10日「羊飼いたちの信仰」

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羊飼いたちの信仰

日付
説教
田村英典 牧師
聖書
ルカによる福音書 2章8節~20節

聖句のアイコン聖書の言葉

2:8 さて、その地方で、羊飼いたちが野宿をしながら、羊の群れの夜番をしていた。
2:9 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。
2:10 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。見なさい。私は、この民全体に与えられる、大きな喜びを告げ知らせます。
2:11 きょうダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。
2:12 あなたがたは、布にくるまって飼葉桶に寝ているみどりごを見つけます。それが、あなたがたのためのしるしです。」
2:13 すると突然、その御使いと一緒におびただしい数の天の軍勢が現れて、神を賛美した。
2:14 「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和が、みこころにかなう人々にあるように。」
2:15 御使いたちが彼らから離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは話し合った。「さあ、ベツレヘムまで行って、主が私たちに知らせてくださったこの出来事を見届けて来よう。」
2:16 そして急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉桶に寝ているみどりごとを捜し当てた。
2:17 それを目にして羊飼いたちは、この幼子について自分たちに告げられたことを知らせた。
2:18 聞いた人たちはみな、羊飼いたちが話したことに驚いた。
2:19 しかしマリアは、これらのことをすべて心に納めて、思いを巡らしていた。
2:20 羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて御使いの話のとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。
 (新改訳聖書2017年度版)
ルカによる福音書 2章8節~20節

原稿のアイコンメッセージ

 今日は、クリスマスに関連する御言葉から学びます。

 ルカは福音書を書くに当り、医者らしく、1:3で「全てのことを初めから綿密に調べて」いると書いています。ですから、自分の足でユダヤへも行き、関係者に取材し、情報を得たでしょう。そのため、他の福音書にはないルカ独自の興味深い内容が多く見られます。今日の箇所も、イエスの誕生時を彷彿させる見事なタッチで伝えています。多くの人が言うように、ルカには絵心があったようですね。

 それはともかく、彼はこの福音書を、主イエスの十字架・復活・昇天から30数年後の紀元60年代に書いたと考えられています。ということは、羊飼いたちも皆、歳を取り、亡くなった者もいたかも知れません。ルカは、老人になった羊飼いたちやその家族から、他の誰も知らないこの特別な出来事ついて聞いたことでしょう。

 御使いの話を聞き、飼葉桶に寝ている幼子イエスに会った羊飼いたちは、その後もイエスについて見聞きし、イエスの誕生時のことを何度も思い出しては、神が彼らを選んで素晴らしい出来事の目撃者として下さったことに感謝し、周囲の人々にもこの時のことを証ししたでしょうね。

 そこで、彼らの内面に形作られていき、ルカに話した時にも彼らの内に見られたその信仰の一端を見たいと思います。

 第一は喜びです。天使たちが去りますと、彼らは15節「さあ、ベツレヘムまで行って、主が私たちに知らせて下さったこの出来事を見届けて来よう」と話し合い、16節「急いで行って、マリアとヨセフと、飼葉桶に寝ているみどりごを探し当て」ました。

 これは見事に素早い行動です。しかも羊と仕事をそこに置いてです。それ位、天使から告げられた救い主誕生のニュースが嬉しかったのでしょう。「神様は私たちを見捨ててはおられない!私たちを愛しておられる!だから、この素晴らしいことを私たちに伝えて下さったのだ!」

 動物相手の仕事のため、宗教規則も十分に守れず、定めの日に神殿で神礼拝もキチンと出来ません。住所不定で、人口調査の対象にも入れられず、当時のユダヤで最底辺層の者とされ、彼ら自身も自分を卑下して生きていたかも知れません。それだけに、喜びはどんなに大きかったことでしょう。その喜びは消えず、彼らの人生の根底にずっとあり続けましたので、このようにルカに証言出来たのではないでしょうか。

 第二は感謝です。彼らは、天使が話した通り幼子イエスにお会いし、どんなに神に感謝したことでしょう。ですから、彼らは幼子について自分たちに告げられたことを、人々に、17節「知らせ」ました。感謝で一杯でしたので、この素晴らしい出来事を知った喜びと感謝を、自分たちだけに留めておくことは出来ず、人々に伝えないではおれなかったのだと思います。

 当時のユダヤ社会で少々引け目を感じて生きてきた彼らですが、今や彼らの方から一般の人々に近づき、神がなさり、また14節から分かりますが、これからしようとしておられることを皆に伝えました。それ程、彼らは感謝で一杯でした。きっと彼らは感謝の人として生きて来たことでしょう。

 第三は神賛美です。20節「羊飼いたちは、見聞きしたことが全て御使いの話の通りだったので、神を崇め、賛美しながら帰って行った。」

 自分自身のことや周りの様々なことにすぐ振り回され、アタフタし、沈みやすい私たち罪人の魂と人生に、神を崇め、神を賛美するという要素が入ってくる!加わってくる!何と素晴らしいでしょう!

 羊飼いたちは、賛美しながら羊の所へ戻って行ったこの時のことを、その後の人生で何度も思い出し、辛いイヤなことがあっても、きっと彼らの魂と人生に賛美が絶えることはなかったでしょう。ですから、数十年後であっても、20節のように、ルカに語れたのだと思います。何という幸いでしょうか。

 全く義にして聖なる神の前に、自分で自分を罪から救える者など、一人もいません。けれども、神はただ恵みにより御子イエスによる救いを提供して下さいました!そして誰もがただイエス・キリストへの信仰だけで救われ、羊飼いたちのように自分を変えられることが出来ます!クリスマスの持つ豊かなメッセージの一つは、これに他なりません。

 幼子イエスにお会いした羊飼いたちに、その後、イヤなことや悲しい苦しいことは当然あったでしょう。今日、私たちが主イエスを信じ、受け入れ、依り頼んでいても、同じです。自分の失敗と不信仰と罪に泣くこともあります。

 それにも関らず、羊飼いたちの魂の根底には、通奏低音のようにイエス・キリストによる喜びと感謝と賛美があります。何があっても、また歳を重ねても、数十年前の恵みの記憶を何度でもまた思い起す。何という幸いでしょう!

 神はこのような幸いへと、今も私たちを招いておられます。この恵みの神を、生涯、繰返し仰ぎたいと思います。

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