2023年10月19日「十戒の学び47 第八戒3」

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十戒の学び47 第八戒3

日付
説教
田村英典 牧師
聖書
出エジプト記 20章15節

聖句のアイコン聖書の言葉

20:15 盗んではならない。出エジプト記 20章15節

原稿のアイコンメッセージ

 神の下さった大切な道徳律法の中心にある十戒の第八戒を今日も学びます。

 今までの学びを少し振り返ります。まず、私たちの所有物は全て、御子イエス・キリストを通しての神からの恵みによる頂きもの、預りものに他ならないという根本的なことを学びました。

 次に、持ち物は単に持ち物であるに留まらず、人の喜びや生きること自体に関ることも多く、それを盗み奪うことは、所有者自身を深く傷つける重い罪であり、逆に人の持ち物を尊ぶことは、所有者自身を尊び、隣人を愛するという神のお喜びと密接に関ることを学びました。

 今日は、第八戒についてもう少し具体的な点を見ます。この点では、信仰の先輩たちの残した文書から多くのことを教えられます。

 宗教改革時代の1563年にドイツで作られましたハイデルベルク信仰問答の問110は、神が第八戒で禁じておられることとして、こう教えます。「神は権威者が罰するような、盗みや略奪を禁じておられるのみならず」と言い、「私たちが自分の隣人の財産を、自分のものにしようとする、あらゆる邪悪な行為また企てをも、盗みと呼ばれる」と言って、該当する具体例をいくつか挙げます。例えば、「暴力」によるもの、「不正な重り、物差し、升、商品、貨幣」によるもの、「利息のような合法的な見せかけ」によるもの、つまり、悪質な高利貸しも挙げます。興味深いことに、「神の賜物の不必要な浪費」も挙げます。

 ハイデルベルク信仰問答から約80年後、ロンドンのウェストミンスター寺院で開かれましたウェストミンスター聖職者会議の作った大教理問答は更に詳しく述べます。

 第八戒の禁じることとして、「地境の移動」「高利(貸し)」、「賄賂」、「不法な土地囲い込みと住民追放」とあり、当時の社会背景もあるのだろうなと思わせる内容もあります。しかし、実はこれらのどれにも証拠聖句がついています。つまり、これらのあくどい罪は、時代や国を問わず、人類に共通して見られるということです。

 また「怠惰、浪費」を上げ、更に「身を持ち崩すに至る勝負事」さえ挙げています。

 今挙げた中の浪費と怠惰を少し取り上げてみます。怠惰を戒め、不必要な浪費をしないことは、一般社会道徳にもあります。神は、救いに至る特別恩恵を私たちにお与えになるだけでなく、信仰のない人にも広く一般恩恵を与えておられますので、怠惰と浪費を悪とすることは全人類共通のものとなっています。

 しかし、第八戒が怠惰と浪費を禁じることについて、私たちクリスチャンは、あくまで神との関係においてしっかり認識すべきでしょう。イエス・キリストの十字架のお蔭で、すなわち、ただ神の恵みにより救いに与った者として、私たちはどこまでも、神の栄光を顕し、神を褒め称え、永遠にまた生の全領域において神を豊かに喜ぶという、この最も尊い目的の為に、浪費を抑え、節約し、怠惰を戒め、勤勉に働くのです。要するに、単なる節約や勤勉ではありません。大切な福音の前進に役立つために、言い換えますと、「献げるために」私たちは浪費を戒め、節約・倹約に努め、怠惰を戒め、労働に勤しむのです。

 今、「倹約」と触れました。ウェストミンスター聖職者会議にスコットランド教会から特命委員として出席し、信仰規準の成立に大きな役割を果たしましたサミュエル・ラザフォードの作った『ラザフォード信仰問答』というものがあります。それを見ますと、ラザフォードは、第八戒の解説で「質素、あるいは倹約と物惜しみしないこと」を大きく取り上げています。興味深いと思います。

 消費を美徳とするようなバブル経済のはじけた後、社会に様々な反省が見られるようになりました。良いことです。しかし、私たちクリスチャンは、単に勿体ないからという所から来る質素や倹約ではなく、<物惜しみなく神と人のために献げ、用いるという積極的な目的>の下に、浪費を戒め、神の下さるものを無駄にせず、質素で慎ましくあり、節約、倹約に努めたいですね。

 ヨハネの福音書6章は、一人の少年が持っていました大麦のパン五つと魚2匹をもとに、主イエスが、男だけでも5千人の人に満腹するまで食べさせられたことを伝えています。女性や子供たちも加えますと、大変な人数になったでしょう。興味深いことに、そこの12節はこう伝えています。「人々が満腹した時、イエスは弟子たちに、『少しも無駄にならないように、残ったパンの屑を集めなさい』と言われた。」

 繰り返します。単なる節約、倹約ではありません。いわんや、ケチではありません。神が下さった恵みを少しも無駄にせず、皆でもっと豊かに神を喜べる者となるために、そして神の栄光と私たち皆の幸せのために、「正しく賢くよく管理する」という意識、姿勢を、第八戒を通して改めて教えられます。心したいと思います。

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