2023年03月09日「十戒の学び34 第六戒5」

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十戒の学び34 第六戒5

日付
説教
田村英典 牧師
聖書
出エジプト記 20章13節

聖句のアイコン聖書の言葉

20:13 殺してはならない。出エジプト記 20章13節

原稿のアイコンメッセージ

 今日も第六戒を学びます。

 これまで私たちは、主として第六戒の消極的な面、つまり、これが禁じている思いと言葉と行いにおける罪の面に注目して来ました。ウェストミンスター小教理問答の問69は言います。「第六戒が禁じていることは、私たち自身の命を奪うこと、あるいは、隣人の命を不当に奪うこと、またその恐れのあるような全てのことです。」

 他方、第六戒には積極的な面もあります。ウェストミンスター小教理問答の問68は言います。「第六戒が求めていることは、私たち自身の命と他人の命を守るために、あらゆる正当な努力をすることです。」

 今日は、自分と他人の命を守るために、あらゆる正当な努力をするという積極的な点を学びたいと思います。

 クリスチャンからのものではありませんが、「人は皆いつか必ず死ぬのだから、医療を初め、人を生かす努力なんて、余り意味がないのではないか」という、やや穿った(うがった)発言というか質問を、大分昔ですが、受けたことがあります。恐らく、自分や自分の愛する大切な人が実際に死に直面する時には、こんな問いや発言は出ず、あくまで頭で考えた理屈だけのものだと思いますが、これに対して私たちは聖書的にどう答えると良いでしょうか。

 第一に、未信者の方々の命を守るためにあらゆる正当な努力を私たちクリスチャンがすべき理由は、特に救済論的な観点から言いますが、彼らが何よりイエス・キリストの救いの福音に1回でも2回でも多く触れ、創り主なる真(まこと)の神の愛を知り、永遠の救いに与って下さるためと言えます。

 人は生きていてこそ、福音に触れ、イエス・キリストの十字架と復活の事実、また全ての人間に対してもつその意義を知って、神の愛に心を動かされ、回心し、救われることが可能です。死んでしまってからでは遅いです。未信者の方々にとって、身体的生命は最も大切な魂の永遠の救いと大いに関係します。ですから、私たちクリスチャンは、未信者の方々の命を守るために、あらゆる正当な努力をする義務があると言えます。そして、これは単に理屈や義務感からではなく、真(まこと)の神の愛に促された隣人愛の一つの具体的かつ真剣な奉仕でもあると言えます。

 では第二に、イエス・キリストへの真(まこと)の信仰により罪の赦しと永遠の命に既に与っているクリスチャンの命については、どうでしょうか。もう救われていて、いつ天に召されても大丈夫なのに、それでも私たちが彼らの命を守るべき理由は、何でしょうか。

 ここで、聖化論、それと生の質とか命の質と呼ばれます、いわゆるQOL(Quality of life)がとても大切になります。QOLは、未信者の方々にも、無論、とても大切です。これがより良く保たれることで、福音もよく理解でき、受け入れて頂きやすいからです。

 とにかく私たちは、ただ呼吸ができ、食べて話せるというだけでは、十分とは言えません。確かに真(まこと)のクリスチャンは、やがて主の御許に必ず召して頂けます。しかし、神が世で生かして下さっている間、クリスチャンは御言葉(みことば)と御霊(みたま)により、神をもっと十分に知り、神と交わり、特に神の愛を知り、愛に根差して生き、神の栄光を現わし、神を更に喜べる者に成長することを、神は望んでおられます。

 ですから、パウロはエペソ教会の信徒のために、エペソ3:14~19でこう祈りました。「こういうわけで、私は膝を屈めて、天と地にある全ての家族の、『家族』という呼び名の元である御父(みちち)の前に祈ります。どうか御父が、その栄光の豊かさに従って、内なる人に働く御霊(みたま)により、力をもってあなた方を強めて下さいますように。信仰によって、あなた方の心の内にキリストを住まわせて下さいますように。そして、愛に根ざし、愛に基礎を置いているあなた方が、全ての聖徒たちと共に、その広さ、長さ、高さ、深さがどれ程であるかを理解する力を持つようになり、人知を遥かに超えたキリストの愛を知ることができますように。そのようにして、神の満ち溢れる豊かさにまで、あなた方が満たされますように。」

 繰り返します。クリスチャンの場合、体の苦痛が少なく、食事も摂れ、周りと何とか意志疎通ができ、応答できることは、感謝ではありますが、それで十分というのではありません。勿論、最後の時はそうなります。しかし、可能ならば、創り主にして救い主なる神を更に豊かに知り、清められ、つまり聖化され、神を喜び、テトス2:10が言いますように「あらゆる点で、私たちの救い主である神の教えを飾る」者となり、生かされる間、福音をこの世で証しする者でありたいと思うのです。

 霊的な点をも含めたQOL(生の質、あるいは命の質)を考え、自分の命も他人の命も良い状態でいることができるために、医療の面でも日常生活の面でも具体的に極力工夫し、積極的に保持する。これが、第六戒で神が私たちに求めておられることと言えるでしょう。

 慈しみに満ちた主が、更に私たちを教え、力づけ、導いて下さいますように!

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